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Mission
◇
依頼があった翌日の今日は珍しく快晴。
蒸し暑い中、佑月はスーツをかっちり着ていた。
本音は涼しげでラフな格好が良かったのだが、なんでも依頼者である松本が、スーツフェチだそう。
佑月が今何処で何をしているのかと言うと、例の彼氏と対面するべく、隣街のオシャレなカフェにいる。
隣に座る松本は佑月と同じくスーツで、終始俯いたままだ。
「そろそろ来る時間じゃないですか?」
腕時計を確認すると、約束の時間である午後一時。
「え? あ、そうですね」
松本はハッと顔を上げ、店内をキョロキョロと見回す。
一体どんな男なのだろうか。 想像すら出来ない。 一応、念入りに松本とは口裏を合わせておいた。 だが、実際向こうがどう出るか分からないため、松本に頼らなきゃならない場面も出てくるだろう。
少し不安はあるが、失敗は許されない。
松本の為にもと、佑月は意気込んで大きく息を吐き出した時。
「き、来ました」
松本が小さな声でそう言いながら、佑月の袖をクイクイと引っ張ってきた。
ついに対面の時が来た。
佑月は背筋を伸ばして店の入り口へと視線をやった。
店員の案内を断り、少し店内を見渡した男が直ぐにこちらに気付いて眉をしかめている。
スーツを着ていて、がたいが良く、一見ガテン系にも見える強面の男。
佑月は思わず目をしばたたいてしまった。
なんと言えばいいのか。松本のタイプからしてイメージが違い、とても怖そうに見えたからだ。
佑月はこっそりと唾を飲み、緊張の汗をかいていた。
「よぉ、待たせたな……学」
不遜な態度で嫌みったらしく笑みを浮かべ、佑月らの前に腰を下ろした男に、松本は小さく首を振った。
「で、そいつが例の彼氏ってやつか」
「う、うん……。ゆ、佑月って言うんだ」
「初めまして」
佑月は短く答え、頭を軽く下げた。
男はじろじろと無遠慮に佑月の顔を眺め「へぇ」と、なぜか熱っぽい視線を送ってきた。
「学、こんな美人とどこで知り合ったんだよ。お前ごときが落とせるようなレベルじゃないだろ」
随分な言い草をするものだ。 ずけずけと物を言って、かなり失礼な男だ。
佑月は不快感を露に、思わず眉を寄せ、男を睨んでいた。
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