68 / 444

Mission 5

「分かりました」  真っ直ぐ松本を見据えて返事をすると、松本は満足そうに笑みを深めた。 「ありがとうございます。ここまで協力して下さるなんて思ってもみなかったので、とても嬉しいです」 「いえ。向こうが本当に受け入れてくれたのかを確認出来るまでが、うちの仕事ですし」 「はい……」  そんな言葉を発しながらも、出会った当初、須藤に言われた言葉が佑月の頭に(よぎ)った。 『最後までしっかりと仕事をするその姿勢と、責任感の強さは大したものだと思う。だがな、状況によってはそれが仇となる事を忘れるな。特にお前はもっと自分を知るべきだ』  頭の中で何度も何度も繰り返される言葉。  だが須藤が何て言おうが、これは【J.O.A.T】の方針であるし、佑月の仕事でもある。 例えどういう結果に陥ってもだ。  佑月は須藤の言葉を振り払うように、水を一気に飲み干した。  それから今後のことも二人で話し合って、佑月らは解散した。  思ったよりも神経を使っていたようで、事務所に帰った頃には、ドッと疲れが出てしまっていた。 「ただいま」 「佑月先輩お疲れ様でした」  客がいないことを確認してからソファに佑月が座ると、直ぐに花が温かいお茶を入れてくれた。 「ありがとう」 「いえ」  はにかんで首を振った花は佑月の隣へと腰を下ろし、双子もソファに座った。 「で、どうでした? 上手くいきましたか?」 「……うん、まあね」 「何か問題でもあったんですか?」  苦笑する佑月に陸斗は心配そうに眉を寄せた。 佑月は今日の事と、今後の対策など三人に話して聞かせた。 話終えると三人は何とも神妙な面持ちで考え込んでいる。 「先輩、こう言っちゃなんですが、そこまでする必要ありますか? デートとか……」 「そうっすよ! 相手は認めたんですから、そこで解決でいいと思います」  陸斗に便乗して海斗にまで言われてしまう。 「うん。そうなんだけど、さっき話した通り、まだ完全に安心出来ないだろ? それに……」  訴え掛けるように二人を見据えると、二人揃って渋面を作った。 「佑月先輩の方針はちゃんと分かってます。先輩の真意も分かりました。だけど余計に心配なんです」  どうしたものかと、佑月は困ったように少し項垂れる。  みんなの理解を得られないと、流石に単独で行動するのはマズイ。 「佑月先輩、兄貴の言う通り──」 「もう! 陸斗も海斗も、成海さん困らせてどうすんのよ!」  花が痺れを切らしたような鋭い声を上げる。  それにすかさず反応して口を開きかけた海斗を、陸斗は 制する。 「兄貴?」 「花の言う通りかもな。佑月先輩を困らせてどうすんだって話だよ。すみません先輩。だけど、無茶だけは絶対にしないでください」  真剣な目を向ける陸斗に、佑月は頷いた。 「ありがとうみんな。いつも俺のワガママに付き合ってくれて」  振り回す事の方が多いのに、いつも付いてきてくれる三人に感謝の意を込め、佑月はゆっくりと頭を下げた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!