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Mission 6
「そんなのワガママの内に入りませんって! なぁ?」
海斗がそう言うと二人は「もちろん」と声を揃えて言う。
「ありがとう……」
自分は友に恵まれていると、佑月は嬉しさの余り涙腺が緩みそうになった。
「あ、そうだ、この間の須藤のことなんですけど」
幸せに浸っていた佑月のハートは、須藤の名を聞いた瞬間無様に跳ね上がった。
「この間?」
平静を装って海斗に訊ねるが、少しの動揺が声に出た。
「ほら、水曜日須藤来なかったでしょ?」
「あー……そうだっけな」
佑月は惚けながら、あの時のことを思い出す。
来なかったが、電話があった。少しピリピリした須藤の声が甦る。
「どうやら今トラブってるみたいですよ」
「トラブル……?」
佑月は思わず眉間にシワを寄せる。
「はい。須藤の取引相手だった男が何者かに消されたようで……」
陸斗が答えてくれる内容に、佑月の表情は固まる。 消されるとか、そういうことが普通に起こる世界にいるのだ、須藤は……。
改めて自分とは別世界の人間だということを痛感する。
「運び屋が随分怒ってたしな」
「あぁ……」
「そうだった。兄貴はアイツのこと嫌いだったよな」
「まあな……どうもあの性格が気に食わない……。鼻持ちならねぇんだよ」
「アハハ! 確かにあの、人を見下した感が半端ねぇもんな」
陸斗がこんなに嫌悪感を表に出すなど珍しい。 須藤の時でも、ここまではっきり相手を否定する言葉を吐くことはなかったのにだ。
どうやら一癖ありそうな運び屋らしい。
「ふぅん、なんか性格悪そう。その運び屋って男なの?」
花の質問に海斗は頷いた。
「そ、男。変装が得意で、時々女になる時もある」
「へぇー! 女に変装出来るってことは、かなり綺麗なんじゃないの?」
「さぁ……どうだかな」
海斗が少しムッとしたように答えた為に、花と少し言い合いが始まってしまった。
そんな二人を無視した陸斗は、佑月へと話を再開させた。
「それで今、須藤は取引相手を消した人間を探してるため、周辺含めかなりピリピリしてる状態なんです」
「そっか……」
やはり気のせいではなかったわけだ。
そんな時でも須藤は律儀に連絡などしてきたのだろうが……。
陸斗の話に耳を傾けながらも、佑月の中では何とも形容し難い気持ちが渦巻いていた。
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