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Trap 6

「いやぁ、お客さん、芸能人か何かですか?」 「え? あ、いえ、ただの一般人です」 「本当に? なかなか見ない色男っぷりだし、男のワシでも思わず見惚れてしまいますからね」 「そうですか? 嬉しいですね……」  ニコニコとルームミラー越しから佑月を見る運転手。 きっとこれはずっと喋り続けるパターンだ。案の定、何かまだ話そうとする運転手に断りを入れて、佑月はすぐに松本に電話を掛けた。 『もしもし……』 「松本さん大丈夫ですか?」  直ぐに出てくれたが、弱々しい声。 『はい、大丈夫です……』 「まだいるんですよね?」  耳を澄ましてみたが、吾郎の声は聞こえない。 『はい……何か音がするので居るとは思います』 「後二十分ほど掛かりますけど、無理はしないで下さいね」 『はい……すみません。ご迷惑おかけして……』 「いいえ、松本さんはそんな事を気にしなくていいです」  とにかく早く向かうことが先決。 真意は一体何なのか。それを確認するためにも。  ホテルに着くと、お釣も受け取らずタクシーから降りた佑月は、駆け足でホテル内に入ると、直ぐにエレベーターに乗り込んだ。  幸いエレベーター内に人はおらず、佑月は息が少し切れる中、松本に電話を掛けた。 「……松本さん大丈夫ですか?」 『あ、成海さん……はい、大丈夫です。成海さんこそ大丈夫ですか? その……お一人ですよね?』 「ええ、一人ですが大丈夫です。松本さんが無事なら良かったです。今ホテルに着いて部屋に向かってます」 「ありがとうございます……本当に……」  松本から聞いた部屋は十階の【1128】。  頭で何度も復唱しながら、エレベーターを降り、走り出す。 『エレベーターを降りたら左に入って一番奧の部屋です』 「はい」  目的の部屋の前に着くと、佑月は通話はそのままに部屋の扉をノックした。  きっと男はこのままでは出てこないだろう。 案の定暫く経っても出てくる気配はない。 「松本さん、俺が来てることを相手に言ってもらえますか?」 『え……いや、でも……』 「ここが開かないことには部屋に入れませんから。彼はきっと開けてくれるはずです」  きっぱりと断言して言う佑月に、松本は暫く黙っていた。これは直感だ。 きっと、あの男は開けるはずだ。

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