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Trap 7
『……分かりました』
意を決したように、ようやく返事をくれた松本は、吾郎の名を呼んだ。
受話口から『やっと出てくる気になったか』と吾郎の笑う声が聞こえてきた。そこで通話が切れてしまう。
「切られたか……」
スマホを上着に戻して、こちらも臨戦態勢を整えるよう気を張った時に、ガチャリとドアが開いた。
佑月はゴクリと唾を飲む。そこに立っていたのは、紛れもなく吾郎という男。
「これはこれは、麗しの王子様。どうぞ」
部屋の扉を大きく開け、入るよう促す吾郎の口元はニヤリと弧を描いていた。
「……」
嫌な空気が漂う。
ここまで来て重くなる足に活を入れて、佑月はゆっくりと中へと入った。
入ると思ってたよりも広くて驚いた。 シングルのベッドが二つ。仕事でと松本は言っていたが 、他に部屋の空きはなかったのだろうか。思考を巡らせていると、佑月の後ろから笑う声がした。
振り向こうとした瞬間、吾郎が佑月の肩を抱き寄せ、顔を近づけてくる。
「ちょっ……」
「一人で乗り込むとは大した男気だな。見た目からは想像も出来ないそのギャップがたまんねぇよな」
耳元で囁かれ、ゾッと佑月の背中に悪寒が走る。
「離してもらえますか」
「クク……その目もかなりそそられる」
相手を刺激しないよう大人しくしていたのが悪かった。 吾郎の顔を見上げようとした瞬間には、佑月の身体は突き飛ばされていた。
「っ、何……するんだ!」
ベッドへ突き飛ばされ倒れ込んだ佑月は、慌てて身体を起こそうとした。が、それよりも早く吾郎は佑月を素早く仰向けに反転させ、両手首を縫い付けた。
「何して……」
体格のいい男。拘束から逃れることも出来ない自分の非力さを呪った。
上から見下ろしてくる吾郎が、やらしく舌舐めずりなどしてくるから、気持ち悪くて仕方がない。
「えっーと、あれだ……学が相手してくれねぇんだ。代わりに王子様が慰めてくんねぇとな」
「……学くんは無事なんですか?」
佑月が男を睨み付けた時。
「オレなら無事ですよ。成海さん」
凛とした声に佑月が顔を右に倒すと、松本が微笑みながらソファに腰を下ろして、しなやかな所作で足を組んでいるところだった。
とても恐怖で脅えていた人間には見えないほどに優雅な空気。前髪が重く、眼鏡をかけて同じ松本なのに、まるで初めて見る人物のよう。
心臓が嫌な音を立てる。だけどそれも一瞬で、佑月は驚きで見開いていた目を細めていった。
「……なるほどな」
佑月は苦笑して二人を交互に見た。
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