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Trap 11

「うん。普通では手に入らないね。通常出回ってる物と違って、即効性があって効き目は抜群。特に塗るタイプのこれなんかはね」  最後に佑月を一瞥する松本。目が合うと、相変わらず場にそぐわない微笑みを向けてくる。 「こんなことをして楽しいですか?」 「こんなこと……。そうですね、普通ならしないし、楽しくはないですね」 「だったら何で!?」  そう叫ぶも、松本はただ笑みを返すだけで、直ぐに身を翻してソファに座ってしまう。  普通はこんなことをしないと言った。と言うことは、やはりこの松本には他の意図がある。個人的に、何かしら佑月に対して思うところがあるということだ。  今まで様々な依頼をしてきた。その内容によって、依頼人の関係者などに怒鳴り込まれる事や、恨まれることもあった。  だから、もしかすると松本もそれに近いものがあるのかもしれない。だからと言って、こんな……。 「さてと、これ二つ同時に使ったらどうなるか楽しみだな」  小瓶を舐めながら、吾郎は佑月に熱い視線を向ける。 「一つは香水タイプか」  そう言うなり、佑月のワイシャツのボタンを引きちぎり、香水タイプの液体を一気に振りかけてきた。 「うっ……」  甘ったるい香りが鼻腔に入り込み、()せそうになって息を止めたが、これも無駄な足掻きにしかならない。  そんな佑月を余所に、吾郎は佑月のベルトを外すと、一気にスラックスを膝までずらしていった。 これにはさすがに冷静ではいられなかった。 「おい! 本当に……マジでやめてくれ」  必死に身を捩って抵抗しようとするも、吾郎は「やめるわけないだろ」と佑月の身体に手を滑らせていく。 「やめろ! 触るな!」  抵抗しないでいようと、必死に耐えていたのにそれが出来なくなった訳。  さっきの香水……催淫剤。  身体が僅かだが熱い。心臓の鼓動もやけに速くて、呼吸も荒い。即効性だとか言っていたが、こんなに早く効くものなのか。 「はぁ……すげぇ綺麗な肌だ。滑らかで吸い付くようだ」 「っ……やめ」 「ここも綺麗なピンク色してんじゃねぇか。美味そうだ」  指の腹で胸の先端を潰すように()ねられ、さっきまで感じなかった微電流がそこから流れている感覚がした。 「ん……はっ……さわる……な」  さっきまで何も感じなかった箇所が疼く。渾身の力を振り絞って、吾郎の手から逃れるために上半身を捻った。それが最悪の事態を招いてしまうことに。 「まぁ、そこは後でたっぷり可愛がってやるよ。どうやら早くこっちをして欲しいみてぇだからな」 「あ……っ!」  うつ伏せになった上半身は押さえつけられ、苦しみもがく佑月の下着は、ついに脱がされてしまった。 「やめ……ろ! さわんじゃねぇよ!」 「暴れるな」  手も足も縛られ、不自由な身体ながらも必死に暴れるが、吾郎はやすやすと佑月の腰を持ち上げる。 「なっ……」  うつ伏せの状態で腰だけを高く上げた体勢。しかも尻を丸出し。こんな恥辱を受ける羽目になるなんて。怒りやら、悔しさやら、情けなさ、沢山の負の感情が一気に佑月の中へと流れ込んでくる。 「手を離せ……こんなこと今すぐやめろ!」 「おい、暴れるなって。なぁ、こいつの身体押さえつけといてくれよ」  暴れる佑月に手を焼いたのか、吾郎は松本を呼ぶ。 「フフ……かなり苦戦してるね」 「チッ、とんだ暴れ馬だ」 「なっ……二人がかりなんて卑怯だぞ!」  そんな訴えはもちろんスルーされる。  松本の身体は見た目では、か細くて華奢な感じがするが、力は思いの外強い。頭と背中を押さえつけられ、身動きが取れなくなってしまった。  いくらなんでも二人には太刀打ち出来ない。  〝やめろ〟〝離せ〟〝触るな〟その言葉を繰り返し口から出すことしか出来ない。  まさに屈辱的だった。こんな男に触れられ、嫌悪感にも(さいな)まれる。 「っ!」  突然尻臀(しりたぶ)をぐっと広げられ、指で後孔をくるくると撫でられる。羞恥と怒りとでカッと佑月の身体が熱くなった。  媚薬のせいでも熱い身体。発散出来ない熱が籠って苦しい。 「このクリーム、中に塗っても大丈夫なんだよな?」 「うん、大丈夫。だけど壊れちゃうかもね」 「はは、壊れるところを見てみたいもんだ」 (好き勝手言いやがって……)  もう言葉を出せないほどに息が上がって、漏れるのは悲鳴のような声だけだった。

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