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Serenity 4
確か今日はあまり財布に金を入れていなかった。余計な出費もあったし。カードを持たない主義は、こういう時少し不便だったりする。
仕方がないから、アパートに着いたら恥を忍んで、金を取りに行くしかない。ここに居るよりはだいぶマシだろう。
ノロノロとベッドから降りようとした佑月だったが、まるで腰に鉄球でもぶら下げているかのように重怠い。ゆっくりと降りてみても、怠くて直ぐに座りたくなる。
ここで座ったら、もう絶対立ちたくなくなる。と、ふと佑月は自分の身体に目を落とした。光沢を放つ滑らかな素材。
(その前に服だった)
チラリと後ろを向くと、須藤は悠然と煙草を吹かして佑月を見ていた。
「あの、すみません。服を貸して欲しいんですが……」
「ない」
間髪を容れずに即答され、佑月は固まってしまう。
そりゃこれだけ世話になってて、服まで貸せというのは図々しいと思う。だが、即答しなくてもいいではないかと、佑月は困り果てた。
いくらなんでもこんな格好でというのは、絶対にタクシーの運転手に不審に思われる。
ザ・パジャマだから。
「そんなことより」
不意に後ろから、佑月の身体に逞しい片腕が回される。驚く間もなく、そのまま引き寄せられた。
「何するんだ……いっ」
ズルズルと再びベッドに戻されたと思えば、佑月はあっという間に押し倒され、上からがっしりと押さえ付けられる。両手もシーツに縫い付けられ、びくともしない。
「今後、今回のような依頼は受けるな。特に男相手はな」
「え……? 今回の依頼って……何で知って……」
「詳細は双子から聞いた」
「詳細って、何でそんなことに……あ!」
そう言えば、須藤と会わなくなった日から感じていた違和感。
自宅に着いた時や、出掛けた時、いつでもふと何か視線というのか妙な感覚があった。
『お前の行動は常に把握している』って言っていたのも……。
「あんた、俺をずっと見張らせてたのかよ」
「今日は女のマンションに行ってたようだしな。昔の女か?」
「か、関係ないでしょ」
ずっと張り付かれていた。そこまでするのかと、佑月は須藤を睨み付けるが、須藤は少し怒りを含んだ目で佑月を見下ろしていた。
「数日前にお前、男と二人で毎日会ってただろう? まあ、それは仕事なんだろうと口は出さないようにしたが」
「……」
グッと手首を強く握られ、痛みに佑月は眉を寄せた。
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