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Serenity 6

「お前の言う通り、それはの問題だ。分かってるならお前が気にする必要はない」  〝こっち側〟とは妙に引っ掛かる単語。  佑月が巻き込まれた事なのに、すっかり須藤の問題(もの)に変わっている気がする。 「それってどういう意味ですか? 俺は当事者なんだぞ。気にするなって言われても無理な話だ」  反論するも、須藤は獲物に狙いを定めた猛獣のように、佑月の首筋に柔く牙を立てた。 「っ……なに……」 「お前は俺のもの。忘れたとは言わせないぞ」  脳裏に焼き付けるように、耳元で低く囁いてくる。甘さなんて微塵もないのに、須藤の声に佑月の腰はしびれていく。  忘れたワケではない。須藤の所有物である佑月が襲われたら、自分も当事者だって言いたいのもあるのだろう。  しかしそれだけではないはず。何か他に、別の意味が隠されてるような気がしてならない。 「分かってるのか? 佑月」 「……」  突然だった為に、初めて呼ばれた名前に動揺して、佑月はおもいっきり須藤から顔を逸らしてしまった。  自分の取った行動が、女かよと突っ込みたくなるほど露骨すぎて笑えない。アホすぎる。 「俺から顔を逸らすな」  顎を掴まれ、強制的に正面に向けさせられた佑月は、間近に見下ろす須藤に仕方なく視線を据えた。 (やっぱりニヤケてる。ほんと……イヤな奴だよ) 「いいか、今日の事は忘れろ」 「忘れるっ──」  口を開いた瞬間、唇に触れる柔らかな感触。  直ぐに唇を割って侵入した須藤の舌で、舌を強く吸われ深く絡まっていく。一瞬慌てるも、拒むことも忘れるほどに、須藤のテクに呑まされていく自分に正直驚いた。  あの吾郎だと唇が触れただけでも 、全身が拒絶して嫌悪していたのに。須藤のことも、初めはとても嫌だったはずなのに、なんで今は拒めないのか。それどころか、その愛撫に応えている。何でだ。 「んん……!」  不意に胸部に走る電流。  シルクの寝間着の上から突起を引っ掛かれたりこねられたりして、全身がしびれて佑月は逃げようと身を捩った。  だがそれも力が上手く入らず、逆に胸を差し出すような形になった。  おかしい。そこは飾りのはずだ。なんでこんなにも敏感になっているのか。薬が切れてないのか。 「胸が感じるのか?」 「ちがっ──」  佑月の抗議は須藤の口内へ。 「言っておくが、あの薬ならとうに切れている」

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