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  そう叫んでわんわんと声をあげて泣く僕に、雪梅も執事長も困った顔をした。そして、いち番困った顔をしている父様がぬわんと立ちあがって、そのふたりの前にでる。 「艷黎、どういうことですか?」 だが、僕はコレで完全に雪梅に捨てられたと思って泣き叫んだ。そんな僕を父様はあやすように、もういちどゆっくりと口を開いた。 「叱ったりしませんから、正直に話しをしてくれませんか?」 「──…う"、ぐっ、…ぼぅぐ、…わぁ"、がままいっだ…!……ぜっが、も"…、い"だぁな"い"…、い"う"……!」 父様があまりにも優しく聞いてくるから、今度はおいおいと肩を落として泣いた。もうこの世の終わりだという声で僕が泣くモノだから、父様は「そんなことないよ」と僕の頭を撫でてくれる。 こんなふうに優しくする父様は初めてで、僕はやっぱりコレは気休めなんだと思った。そして、雪梅とお別れなんだと思うと自然と言葉がでてくる。 「ね"ぇ"………、どう"ざま"、………ぼぐ、………ぜっ"がに"ずでら"れ"る"の"……?」 もう悲しいのか、悔しいのか解らなかったが、僕は父様にしがみついておいおいと泣いた。いち度もそういう不満を口にださなかった僕を、父様は嬉しそうにみる。堪えていたモノを吐きだしなさいというように父様は、「艷黎はどうしたいの?」と訊いてくるから僕は素直に答えた。 「……ぼぐ、…ぜっ"がど…、…い"っじょ、…に""い"だい"………!」 我が儘をいってイイのか悪いのか、ソレともコレは僕の兄弟たちも通った道なのかよく解らないが、そういういろんな感情がない交ぜになって、僕はとんでもないことをいってしまったような気がした。だが、もういってしまったことはいまさら取り返しようがない。そう、いまさら後悔してもどうしようもないのだが、僕は父様の胸で「もうなにもかもおしまいだ。どうしよう」と、さらに泣き叫んですべてわだかまりを吐きだしていた。僕の中にあったモヤモヤをぜんぶ吐きだすとなぜだか解らないが、雪梅に抱きしめられる。そして。 「私は嫌ってなどいない。れい、ありがとう」 嬉しいと雪梅にいわれてしまった。僕は雪梅に捨てられないように印綬を盗もうとしたことも、他の主のところにいくのが怖いとか、物凄くいっぱい我が儘をいったのに、どうしてありがとう嬉しいなんだろうと思った。 だが、いまは兎に角、雪梅に捨てられないようにしないと困るから、こう訊く。 「………ぼぐ、ずでら"れ"な"い"?」 ソレが大きなネックだから、僕は父様から離れて雪梅にしがみついた。ココまできたら、形振り構っていられない。雪梅と僕が主従関係で性奴隷の間だとしても。そう、確かな証言が欲しかったのだ。 だが、雪梅は不思議そうな顔をして答えた。 「どうして、私がれいを捨てるの?私はれいが私を捨てないかが心配だったよ?」 私にはお金と権力しかない。れいを私に繋ぎ止めておく力は私にはなにもないんだよともいう。 僕には雪梅のいっている意味がいまいち解らなかったから、僕は「ぼぐ、い"る"の"?」ともういち度雪梅に訊いた。雪梅は息を飲むように僕をみて、ソレからゆっくりと口を開いた。 「ああ、いるよ。必要だ。私はれいを捨てたりしないよ」 今度は僕にも解るように答えるから、僕は嬉しくって泣きだした。 「……ぜっが、………ぜっが………」 声も涙も枯れてでないのに、僕は大声で泣いた。泣き疲れたのと安心したのとで、僕はそのまま雪梅にしがみついて眠ってしまったことはいうまでもないだろう。    

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