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  僕がみる夢の中は幸せでいっぱいだった。僕の隣には雪梅がずっといっ緒にいて、あの家でいつまでも楽しく暮らしていた。そしてなにより、誰も僕を雪梅から引き離そうとはしなかった。 このままずっと夢の中で雪梅といっ緒にいられたらイイのにと思っても、僕の身体はそう長くこの夢をみさせてくれようとはしなかった。ひとが生きていく中で長い睡眠は死を意味して 、起きて身体を動かすことが生を意味しているからだ。 「─────れい、────れい…………」 呼びかけられる声に導かれて、僕は重たい目蓋を開けた。真っ白な空間と能面みたいな真っ白な顔がソコにあって、僕はまだ夢の中にいるんだと思うと嬉しくって泣きだした。 「せっか………、せっか………」 夢だからそういっても大丈夫だと僕は身体を起こすと雪梅に抱きついた。驚いた顔をする雪梅だが、僕が「せっか、………ちゅー」とキスを強張れば雪梅は嬉しそうに僕にキスをしてくれた。 「ああ、コレは単なる思い過ごしですね。安心しましたよ」 ココまで順調よくいっていたのに、急に嫌がることはないと思っていたんですよと、横からひょいと父様の顔が現れて僕は飛びあがるくらい驚いた。ソレと同時に、僕は雪梅にしがみついて泣きだした。 「───いーーぁや、どうざま、ぎらい………!」 「ほら、やっぱり───思い過ごしですって……」 父様はニコニコと笑って、雪梅にしがみつく僕の頭を撫でた。 「艷黎は雪梅くんが好きだもんね」 父様のいっていることはよく解らないが、僕はうんうんと頷く。父様が怒っていないということは、まだ雪梅といっ緒にいられる可能性が高いのだ。 「いくらなんでも、ホームシックにかかるハズがないですよ。艷黎には悪いと思いましたが、ソレはもう厳しく躾たんですから」 父様はそういってひとりしんみりと頷いていた。他の兄弟たちは甘やかし過ぎたからなどといっているようだが、いまの僕には父様がいっている意味が解らなかった。 「…………ボームジッグ………?………じづげる…?」 僕は泣いていた顔をそっと雪梅から離して父様をみたら、父様は少し屈んで僕にこういう。 「そうだよ、他の兄弟たちよりも厳しく接していただろう?」 と。確かにそんな気がして僕は頷いた。父様は悪かったね、本意ではなかったんだと謝ってから、こうも続けた。 「ソレよりも、艷黎はこの半年前に私のところに帰ろうとしたのかい?」 と。だが、僕にはまったく覚えがないことだから僕は首を傾げる。なんのこと?と。逆に、お家に帰りたくなくって雪梅の印綬を隠そうとしたことはあったがと、チラリと雪梅の顔をみた。 すると、尽かさず、叱咤する声があがる。僕はソレに驚いて雪梅の後ろに隠れた。 「しかし、半年前、雪梅様のお金を取ろうとしていたではありませんか!アレは、家に帰るためではなかったのですか!」 声からして、ソレが執事長だと直ぐに解ったが、僕はいちどもお金を取ろうとしたことがないから首を横に大きく振った。だが、執事長は僕を睨んでさらに僕を叱咤する。 「嘘を仰らないでください!なら、なぜ、雪梅様の金庫を無断で開けたのですか!今日も、また無断で開けていたでしょう!」 怒りが収まらないという顔で執事長が僕に近づいてきて、僕はハッとする。ぼんやりとした頭がくっきりとするのと同時に、僕は雪梅を突き飛ばして泣きだした。 ソレで吃驚したのは父様で、まさか?という顔で執事長をみた。執事長は慌てた様子もなく、ご覧の通りですという顔をして、僕から離れる。そして、雪梅までがこの通りですと父様をみて、申し開きをしていただきたいというのだ。 彼らがどうしてそんなことをいうのか僕には解らないけど、僕は泣き叫んだ。 「ゴレ、ゆ"めじゃない"………!!」 と。  

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