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  父様は偉い偉いと僕を誉めるが、どうしてそうご機嫌なのか解らない。 「父様?僕、もういち年は雪梅といられるの?」 名前を変えたからといってずっと雪梅といられるワケではないと思って僕がそう訊くと、また雪梅の眉根があがる。どうしてそう直ぐに不機嫌になるのか僕には解らないが、僕はあとどれくらい雪梅といっ緒にいられるのかを知りたかった。 「黎、この紙は番申請書といって、雪梅くんと番になりますよという紙なんだ」 父様から渡された方の紙を僕にみせて、父様はそういう。僕は聞いたこともない言葉を並べられて、首を傾げた。 「……番?……申請書?」 僕がソレはなに?という顔で瞬きをしたら、父様は頭を掻いた。肝心なことを教え忘れたといって、雪梅をみる。僕にはなにがなんやらで、また首を傾げた。そんな僕をみて、父様はまた僕に向き合うとゆっくりと話しだす。 「イイかい、黎。番っていうのはいっ種の絆みたいなモノで、アルファとオメガだけのふたつの人種間だけで成り立つ結びのことなんだ。だから、黎は雪梅くんと生涯をともに寄り添う間柄にコレからなるんだよ」 「……生涯?」 「ああ、ずっとってことだよ。頼艷黎から張黎に名前を変えたのもそう」 そして、父様は僕を安心させるように僕の頭を優しく撫でた。僕は雪梅と番というモノになってずっと雪梅といっ緒にいられるということは、解ったような気がする。だが、いまいちコレという実感も印もないから喜びも中途半端で、ソレよりも先に気になることが前にでていた。 ソレは、僕は父様がいうアルファとオメガの人種のどっち側なんだろう?というモノ。だから、僕は首を傾げて、取り敢えず、父様が先にいった方の人種を口にした。 「そうなの?じゃ、僕は………アルファ?」 そう期待をした瞳でみていたワケではないのに、父様は物凄く渋い顔をした。 「──ああ、黎、ゴメンよ。父さんの施設はオメガを保護する施設なんだ。だから、黎はオメガの方なんだ……」 期待を裏切るようで悪いんだがとつけ足してまで僕に謝ってくるけど、僕はどうして父様に謝られるのか解らないから。 「………ん?なんでゴメンなの?僕、雪梅といっ緒にいられるなら、どっちでもイイよ?」 安易にそう返した。が、父様はボソボソと僕にアルファとオメガの格差を話す。 「そうかい?だが、オメガは繁殖を担う人種でアルファは国を担う人種なんだ。社会的に差別もあってなオメガは蔑まされているんだよ?」 だけど、僕としては意味の解らない言葉ばかりを並べられただけで、半分しか理解できなかった。ソレに、いまさら線引きだっていわれてもコレまでだってずっとそうだったから、いまさらどう落ち込むというのだろうと思った。むしろ、転生にかける意気込みが強くなっただけだった。 とはいえ、もうひとつだけ物凄く気がかりになることがあった。ソレは。 「父様、雪梅は吸血鬼で、アルファじゃなんだけど僕と番になれるの?」 だ。僕がオメガだと解っても肝心の雪梅が吸血鬼だと番にはなれないだろう。 「どういう意味だい?」 今度は父様の方が首を傾げるから、僕は素直に応じた。 「ん?だって、初めて雪梅にあった日、僕のココをがっぶって雪梅に噛まれたんだけど?」 僕はうなじを指差して、初夜でそうされたと父様にそういう。僕がみたTVで、吸血鬼はひとのうなじを噛んで血を吸って眷族にするといっていた。僕も雪梅に噛まれたから雪梅の下僕だけど、ちゃんと番になれるかな?と訊くと、父様の顔がみるみる内に怖い顔になった。 「雪~梅~く~ん、ちょっとこっちにきてくれるかい。大事な話があるんだけど!」 僕にはよく怖い顔をした父様だが、コレほど怖い顔ではなかった。父様がこんな怖い顔をしたのは、僕の兄弟のひとりが主以外のひとと性行を行ったときくらいだ。 僕は父様を怒らせたと、父様に怒られている雪梅にしがみつく。怒らせたのは僕なのに、雪梅が父様に怒られる所以はなからだ。だから、僕はなおさら雪梅にしがみついた。 「………う、……父様、……ゴメン、なさい。もう聞かないから………怒んないで………」 そして、僕は悲しくなって泣きだしてしまった。僕がそう謝って泣くと雪梅が眉根を戻して、「れいが謝ることではないでしょう」と慰めてきた。 すると、執事長が尽かさず間に入ってきて、さっき僕が練習して書いた名前の紙を僕に差しだした。 「コレで、すべて丸くおさまります」 執事長はそういうが僕にはよく解らない。だが、その紙で父様が雪梅を怒らないんだったらと僕は執事長からソレを受けとると、雪梅の顔をみた。  

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