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噴火の如く鼻血を噴きだした僕は雪梅に介抱されているが、噴きだした鼻血はまったく止まる気配をみせなかった。とうとう執事長が痺れを切らして、医師を呼んでくることになったが、コレがまた厄介なことになるとは誰も思わなかった。
「はーい、診察するんで皆さ~んその子から離れてください」
そう、医師としてきたのが、雪梅の兄様である張雷梅(らいか)だったから。執事長から話だけは聞いていたが、ココまで雪梅と瓜ふたつだとはまったく思わなかったのだ。
「………雪梅が……、…ふたり……」
ぶしゅーと鼻血を再び噴きだす僕を雷梅は慌てた様子もなく、僕の鼻筋をつかんで上に向いた顔を下に向けさせた。
「れい、しっかりして………!」
「はーい、雪梅、慌てない。黎くんはそのまま下向いたら口を開けて。流れてきた血は飲み込まず口からだしてね」
雷梅はそういって僕にステンレスのお皿みたいなモノを渡してくる。
「はい、血の味で気持ち悪いと思うけどコレに吐きだしてよ。ああ、清、逆上せてるっぽいから冷水で絞ったタオルとか持ってきて」
執事長にそういって、雷梅は僕の顔や身体を触りだす。診察らしいのだが、鼻血で名医の診察を受けるとは思っていなかった僕は穴があったら入りたいくらいだった。
僕に触れて数分、雷梅は首を傾げた。そんなに重傷だったのかと思ったら、まったく想像もつかない質問をしてきた。
「う~ん、発情期の薬ってなに飲んでる?」
「………発情期?………薬?」
僕は下に顔を向けて口を開けた姿勢のまま、首を傾げる。なんのことだと僕が困っていたら、父様が口を開いた。
「黎はすでに雪梅くんと番になってます」
「ああ、ソレで。んじゃ、雪梅、黎くんとセックスしたのっていつ?」
雷梅はもう本当に恥ずかし気もなくそういうが、雪梅も本当に恥ずかし気もなく答える。
「今朝だよ、兄さん」
「あ~あそ~うなん~だ。んじゃさ、黎くんと番になってから黎くんって発情期きたかい?」
すると、雪梅が瞬時に眉根を潜めた。父様が尽かさず口を挟んで答えるが。
「あの、黎はまだいち度も発情期をむかえたことはないと思いますが……」
「そうなの?おかしいな………」
雷梅は首を傾げて、「雪梅、兆しみたいなモノでもイイんだけど、なかった?」と不機嫌な雪梅に訊くが雪梅は答えようとしない。父様が不安そうな顔でこう訊く。
「なにか問題でも………」
「いや、問題っていうよりも吉報っていうの?黎くん、妊娠してるよ」
まだちゃんと検査してないから、どのくらいっていうのは解らないけどさ。産婦人科にいってちゃんと検査して貰って。
雷梅はそういうと雪梅に向かって「コレで、雪梅もお父さんだね♪」と嬉しそうに笑った。雪梅もってことは雷梅にも子供がいるのかと思ったら、そうではないようだ。
「あ~あ、雪梅にも先越されちゃったな。俺も頑張らないといけないな、長男として」
雪梅には他にも兄弟がいるらしいが、執事長からそんな話は聞いたことがない。僕が不安そうな顔で雷梅をみたら、雷梅は「ん?」という顔をして僕の頭を撫でた。
「おっ、鼻血は止まったみたいだね。またでるようだったら、いまみたいな格好で血を止めてね」
掴んでいた鼻筋を離して、雪梅には「貧血とかも気になるから、明日、ちゃんと病院いって検査して貰うんだよ」と念を押していた。だが、雪梅は眉根は潜んだままで、不機嫌ですという態度は変わらなかった。
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