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  氷水などを持ってきた執事長と入れかわるように雷梅は部屋からでていき、当然、父様は雪梅と睨みあっていて、執事長は首を傾げる。 「どうかされたのですか?」 「解んないけど、僕が妊娠してるって雷梅がいったらああなった」 喉が渇いたから執事長が持ってきた氷水を貰って飲んでいたら、執事長が僕の顔を覗いてきた。 「ソレでは、明日、私が病院につれていきますので支度の方をよろしくお願いします」 いままでの執事長の行動からして、ひとりでいってこいといわれるのは間違いなかったから、僕は急に優しくなった執事長が怖かった。 「………え、ああ、うん………」 硬直しそうな笑顔でそう返すが執事長の魂胆がまったくみえず、僕は俯く。こういうときは決まって雪梅が間に入ってくれるのに、いまはヘソを曲げたというか父様といがみ合っているから、そうしてくれなかった。 不安というワケではないが、まったく僕のお腹にいる子に興味を示さない雪梅に雪梅の性格がもろにでてておかしくなっていた。 「…………雪梅、ついてこないのかな………」 あの分じゃ雪梅は病院についてこないだろうと思うと思わず、そう本音が溢れる。 すると、いつもならそういうことをいわない執事長がきっぱりと応えた。 「無理でしょうね。雪梅様は黎様にしかご興味がありませんから」 「ありえませんっていっても…、……いち応、黎とはそういうことしていたんでしょう?じゃ、雪梅くんの子供ではないですか!」 僕の言葉を遮って、父様が物凄い剣幕で雪梅に喰らいついていた。なにをそんなに揉めているのかと思たら、僕のお腹にいるだろう赤ちゃんは雪梅の子供ではないと雪梅はいいだしているのだ。 僕としては雪梅以外とセックスをしたことがないから、ああ、認めたくないんだと執事長をみた。 「そうみたいだね。こういう場合おろすっていうヤツをするの?」 僕の兄弟の中でそういうことを望まなかった主がそういっていたことを思いだして、僕は執事長にコップを返しながらそう訊く。 「ソレは、ありえませんね。張家では子孫を残すという義務が設けられてますから」 「そうなの?」 「ええ、例え育児放棄をされてもなんの問題もないようになっています」 確かに僕が育てるよりかは安心できそうだ。が、雪梅は断じて認めないといい張っている。アレで無事に出産まで漕ぎつけられるのか心配だったが、執事長はこうつけ加えた。 「ソレに、雪梅様が認められなくとも雪梅様と結婚をされた以上、その子は雪梅様のお子様になりますから」 と。ソレはもう爽やかに。だが。 「そうなの?でも、アレじゃ、僕の妊娠じたいを認めたくないようだよ?」 雪梅は父様に向かって、セックスで僕をメロメロにできないといっているのだ。 確かに僕が雪梅の身体目当てだと思っている雪梅にしたら、かなりの痛手だ。お腹に赤ちゃんがいるから当分はセックスはできないだろうし。あ、でも今朝したから………。 「ダメです。妊娠と解った以上、セックスは禁止です」 尽かさず、執事長に釘をさされて僕はなんで解ったんだろうと驚いたが、いつもの怖い顔の執事長の顔になっていて安堵はしたモノの苦い顔はした。 ソレでも、前みたいにガミガミと説教をすることはなくなっていて、執事長はひとつ咳払いをするとこうもいうのだ。 「黎様、そう心配することはないですよ。オメガの妊娠期間は二ヶ月ですから」 だが、僕の方が声をあげてしまう。なぜなら、僕は鶏の卵のようにぽこぽこっとでてくるモノだと思っていたからだ。僕の兄弟の話からでもとそうだとしか思えなかったし。 「えっ!二ヶ月!そんなに………!」 僕が嘘だと肩を落としていたら、父様が叫ぶ。 「黎、なにをいってるんだい。通常の妊娠は十ヶ月なんだぞ!」 「ええー!!そんなにも!!」 「僕、オメガでよかった」といえば、執事長は「なにをいっているにですか?出産後、半年はセックスはできなせんよ」とつけ加えるのは当然のこと。 そして、ソレで雪梅がまた眉根のシワを深めたというのも当然なこと。なんでそんなに不機嫌になるのか解った気がしたが、こうも不機嫌になる雪梅はあまり好きではないと思った僕だった。  

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