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  待ち合い室の奥にある個室に入った僕はもう完全にできあがっていた。 「………ねぇ、…雪梅………、チューして………」 甘えるように僕が舌をつきだすと雪梅はれいは甘えん坊さんだなと、嬉しそうにキスをしてくれる。腹痛に耐えながらも雪梅とのセックスを試みようとする僕を、雪梅は止めようとはしなかった。 さて、そろそろおっ始めようと雪梅のモノを寛げようとしていたら、看護師と執事長が飛び込むように入ってきた。僕はチッと舌打ちをして顧みると、看護師の手には大きな注射器みたいなモノが持たれていて僕はいっ瞬で怯んだ。そして、腸内洗浄だと物凄く興奮した様子の看護師が僕に勢いよく迫ってくるから、僕はなおさら怯えた。 すると、雪梅が怯える僕を隠すようにしてその看護師を制した。 「ああ、腸内洗浄はもう終わらせておきました。陣痛の間隔もまだ短くなってません」 そうして、そう慌てることはないですよとアレほど私の子ではないとシラを切っていた雪梅がいまはいち番率先して動いていた。僕はセックスをするためにそうしたんだと思っていたから、「雪梅、セックスをするんじゃなかったの?」と不思議そうに雪梅をみると、雪梅は苦笑いをしていた。 雪梅は父様との約束はちゃんと守るらしく、看護師と話があるからココで待っててとおろおろしている執事長を残したまま注射器を持った看護師といっ緒にでていってしまった。 僕はでていく間際の雪梅に向かってココで話せないことなの?と物欲しそうにみたら、れいはイイ子だよね?と雪梅に頭を撫でられる。そんな風に撫でられたら聞かないワケにはいかない。 待ってを喰らわされた僕がじっと扉を開くのを待っていたら、扉近くにいた執事長がおそるおそる僕に近づいてくる。僕はどう対処してイイのか解らないから外方を向いて視線をそらすと、執事長が肩を大きく落とすのがみえた。 別に僕が悪いことしたワケではないのに物凄く気まずくなって、さらに俯いてその場を切り抜けようとする。どういうワケか、僕のことよりも僕のお腹にいる赤ちゃんにしか興味がない執事長に温度差を感じるたびに、僕は僕にしか興味がない雪梅が恋しくなって仕方がなかった。 「黎様、お加減は………」 「……大丈夫!」 僕はそう短く応えて、執事長に背中を向けるとソファに横になった。その間にもお腹の痛みはどんどんと増して、その間隔もなんだか短くなってきたような気がする。 雪梅、遅いなと痛いお腹を擦っていたら、物凄く吐き気が催す腹痛がきた。腸がねじくり返るような痛みに僕は歯を喰い縛って耐える。 「せ、………いだい………!!」 セバスといいたかったのか、雪梅といいたかったのか解らないが、急に大声をあげた僕に執事長が慌てだす。すると、おしっこを漏らしたように下着とズボンが濡れてソファまでが洪水のようになって濡れていた。生温かい感触がお尻にあって僕がお尻を触ろうとしたら、執事長がいつもの怖い顔で僕を制止させて僕のズボンと下着を脱がしにかかった。 手際のよさは雪梅と同じなのだが、どうももどかしくって仕方がなかった。触ってはダメだともいわれるとなおさらもどかしさがでてきて、とうとう執事長の顔を覗き込んでしまう。すると、脱がされた下着の中から丸い変な物体がコロンとでてきた。 「……な、に……、……ソレ?」 しかも、あんなに苦しかったお腹の痛みも治まっていて、僕はキョトンとした顔で執事長をみる。その物体がなんなのか、僕には解らない。解らないのだが、執事長は物凄く嬉しそうな顔でおめでとうございますというのだ。なにがめでたいのか解らず、僕が首を傾げていると医師と看護師をつれた雪梅が入ってきた。 「雪梅様、元気な男の子ですよ!」 執事長は僕の下着からでてきた丸い変な物体を大事に広いあげて、そういう。看護師と医師は慌ててその物体を執事長から奪うといち目散で部屋からでていってしまった。なにごとだと僕が首を傾げると、保育器というモノに入れるらしい。男のオメガから生まれてくる赤ちゃんはみんな、保育器というモノに入るらしい。生後二ヶ月の赤ちゃんは未熟児らしく、半年は保育器暮らしらしい。 「そうなの?」 僕がそういうと別の医師が入ってきて、僕を診察しだす。 「初産でこんなにも安産だったのは、貴方が初めてですよ。親子揃って健康なのも」 と、ニコニコと笑う医師だが、僕にはよく解らなかった。胎盤も綺麗に剥がれでて胎内に残っていないようですね。僕の蕾に指を突っ込んでそういう医師は僕に、お疲れ様と頭を撫でて、執事長に入院の手続きをするようにいっていた。 「えっと、僕も入院……するの?」 どこも悪くないというから直ぐに帰れると思っていた僕に、医師は出産後は安静が必要だからねというのだ。 「ああ、心配しないで二日間だけだから。後、赤ちゃんの退院は半年後になるけど、毎日、面会できるからみにおいでね」 実に淡白にそういわれると、素直にみにきますと答えてしまう。が、僕の子なのに?という疑問は残っていた。医師は部屋の準備とかできるまでココにいてくださいといって、でていった。入れ違いに看護師が僕に着替えを渡して、汚したソファを片付けてでていった。 着替えを済ませた僕も入院手続きを済ませてきた執事長も嬉しいという顔をするのだが、雪梅だけは納得しない顔をしていた。 「どうしたの?」 僕がそう訊くと雪梅はアレは私の子ではないとまた拒絶することをいいだす。あの手際のよかった雪梅はどこいったと思いつつも、そんなに父親になりたくないのかなと思って、僕は雪梅にこういう。 「アレは、雪梅の子だよ。僕、雪梅以外とはしたことないから」 と。 「同然だ」 雪梅もそう怒るのに、アレはわたくしの子供ではないという顔をまだするから、僕は呆れる。 「だったら、アレはだれの子?雪梅以外いないでしょう?違うの?」 すると。 「れいの中に生ではだしたことない」 避妊は万全だったといいきる雪梅の横で、執事長が雪梅に耳打ちをする。ソレを聞いた雪梅は執事長を睨んだが、もういっ回だけ雪梅に耳打ちをするといっ気にご機嫌な顔になった。なんの話しをしてんだと僕が首を傾げると、さっきの看護師が入ってきて部屋が準備できたから移動しましょうと僕を車イスにのせた。 陣痛が始まって出産まで二時間足らずで、体調も抜群に優れているのに、こういう扱いをされるとなんか至れり尽くせりすぎて申し訳ない気分になる。看護師は「出産後は気が高まっているからそう感覚になるんですよ」というが、身体が元気だと気兼ねしてしまう。 「ココがお部屋ですよ」 そう看護師に案内された部屋は、ワンフロワー筒抜けの部屋だった。僕があんぐりとした顔で執事長をみれば、当然ですという顔をした。いやいや、コレはなんの罰ゲームですか?と雪梅をみたら、こんなもんだよねとあたかも普通に応じていた。流石は金持ちは違うねと感心していたら、昼食はこちらになりますとホテルのメニューみたいなモノを差しだされて、用がありましたらこちらの内線でお願いしますとホテルの宿泊みたいな対応をして、でていってしまった。 あの、ココ、病院ですよねと僕はひとりで涙目になっていた。出産後も変わりなく、僕に優しく接してくれる執事長は、産婦人科はこんなモノですよと僕を車イスからベッドに移して、雪梅となにかを話してから部屋をでていってしまった。  

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