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そんな修羅場を制したのは執事長ではなく、天夢だった。どこからともなく現れて、執事長の手をくぐり抜けた天夢は、僕にこういったのだ。
「かあさま、だめだよ。とうさまがものすごくいたがってる」
おくちあーんしてとソレは優しくいうのだ。ソレも僕の頭を撫でながら。雪梅はそんな天夢を睨むのだが、天夢は怯むことなく雪梅を叱るのだ。
「かあさまがおびえてるでしょう。かあさまがだいすきならにっこりわらわないと」
こうやってわらうんだよと天夢はお手本のように先に笑ってみせて、ほら、とうさまと般若の顔の雪梅を急かす。僕はソレをみて、僕もこの噛んでいる指を離したら、天夢は笑ってくれるかなと噛んでいた雪梅の指を離した。
「ああ、かあさま、いいこだね♪」
よしよしという感じで、天夢は僕の頭をいっぱい撫でて、僕にニコニコと笑ってみせる。僕は嬉しくってもっと頭を突きだせば、雪梅が引き吊った顔で僕に笑ってみせた。僕はそんなに嫌なら笑わなければイイのにと外方を向いたら、なぜか天夢が僕に怖い顔をする。
「かあさま、わるいことしたらごめんなさいをいわないとだめなんだよ。とうさま、ものすごくいたそうなかおしてたんだからね!」
天夢は最初からみていたような口振りで僕を叱るのだが、「ぼくもいっしょにあやまってあげるからだいじょうぶだよ」とつけ加えるのだ。僕は天夢と雪梅を交互にみて、頬を膨らませた。
謝りたくないという顔で渋っていると、天夢は「かあさまはどうしてとうさまがきらいなの?」と首を傾げてくる。「どうして?って、ソレは僕の我が儘を聞いてくれなかったから」と素直に応えると、天夢は「そうかだったら、とうさまがわるいね」と雪梅の方を向いて「とうさま、かあさまにごめんなさいをして」というのだ。
雪梅は思いもよらない理由で嫌われていたことがショックだったのか、僕の中に入っていたモノが小さく縮み込んだ。僕が少し動いただけで、ソレは抜け落ちて、中から白濁したモノが溢れでる。敷いていたシーツが汚れて、ソレを天夢にみられていると思うとなんだか恥ずかしくなって、僕はもういいよといって天夢の目を隠した。すると。
「だめだよ。うやむやにしちゃったら」
僕の手を退かして、天夢は怒る。なんでそんなにムキになるのか聞いてみたら、天夢は僕と雪梅といっ緒に動物園にいきたいらしいのだ。絵本にでてくる男の子はお父さんとお母さんといっ緒に動物園にいくらしい。そして、ソレは天夢がいち番大好きな絵本で僕に毎日聞かせてくれていたようなのだが、僕は直ぐに内容を忘れてしまうから、「そうなの?」と天夢に訊いた。天夢は「そうだよ。いつまでもとうさまとかあさまがけんかしてたらいけないでしょう?」とソレはもう当然のように答えるのだ。
「天夢、ゴメン……」
「いいよ。かあさまはとうさまにあまえたかっただけだもんね♪」
天夢はそう笑って、「とうさまにもごめんなさいをして」という。こんなふうにいわれたら、もう謝るしかない。
「……雪梅、…ゴメン………なさい。……もう二度と我が儘をいわないから……」
「いや、私の方こそ悪かった。れいが私に甘えたかったなんて知らないで、迂闊なことをいってしまった。コレからはいっぱい甘えてイイよ」
雪梅はそういうと、僕を天夢ごとぎゅっと抱きしめてくれた。僕は嬉しくって、「いっぱい甘えてイイの?」ともういち度訊く。
「ああ、私が嘘をついたことがあるかい?」
雪梅は僕に嘘をついたことがないから、「雪梅、大好き」と抱きつき返した。天夢はよかったねと僕の頭を撫でて、「たいいんしたら、どうぶつえんにいこうね、せばす♪」とソレは勝ち誇った顔で執事長にもいうのだ。執事長は少し苦笑いをして、畏まりましたと応えていた。
雪梅と僕はなんだろう?と顔を見合わせたが、天夢が嬉しそうだからイイやと思った。その日はそのまま、雪梅といっ緒に眠った。天夢も僕たちといっ緒に眠っていたが、執事長がこっそりと夜中に運んでいっていた。流石に、精液だらけのシーツの上で寝かすのは可哀想だと思ったのだろう。
翌朝、雪梅といっ緒にお風呂に入って、雷梅の雷をみんなで受けたのはいうまでもないだろうが。
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