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  「ところでさ、天夢兄さま」 結羽が僕のご機嫌を取るようにもういち度僕の口に西瓜を放り込みながら、浮かない顔をする。 いっ方、雪梅は雪梅でそんな僕の口に口をあわせて僕の口の中に放り込まれていた西瓜を少しだけ食べて、「あ~あ、れいの拗ねた顔も愛らしくって、可愛い♪どうしてこうも可愛いの。もう愛らしくって愛らしくってれいを食べてしまいそうだよ」というのだ。僕も僕で現金で雪梅にそういわれると、「雪梅、もっと僕を食べて。血も肉も皮もぜんぶ食べて僕を雪梅の血肉にしてよ」と雪梅に応じて、雪梅の唇に必死に貪りついていた。 片や、天夢は天夢でそんな浮かない顔をする結羽を初めてみたみたいで、首を傾げている。 「ん?どうかしたの、結羽?」 心配だという天夢の顔は、やっぱり天夢が結羽のお兄ちゃんだからだろう。僕はそう思いながらも雪梅に夢中だから、彼らの言葉は自ずと遮断されるハズだった。 「うん、あのね、明日から結羽たちも家族旅行にいくんだけどさ。セバスって、天夢兄さまと結羽のどっちについていくのかな?って」 「ああ~ぁ、ホームビデオの心配をしてんだね。大丈夫だよ。セバスは結羽の方についていく手配になっているから」 天夢はそう応じると執事長にそうでしょうと鬼のような怖い顔をみせていた。 確かに、思いでのアルバムみたいにディープチューやら処女喪失までことあるごとに執事長のビデオにあられもない姿をおさめられていたら、あんな顔になるだろう。僕も雪梅と執事長につき合わされて無理やり撮影したあの数々の作品のことを思うと、もう溜め息しかでこない。 だが、天夢はこういうのだ。 「セバス、解っているよね!もし、万がいちでも母さまのハネムーンアーンを撮りそこねたりしたら絶対に許さないから!」 と。いやいや、天夢の方がハネムーンアーンでしょうと僕がチラと雪梅をみたら、雪梅はもう機嫌が治ったかい?と僕の舌を離してきた。 僕は怒っていたことよりも物凄く気になることができたから、雪梅に頷く。そして、「ハネムーンアーンは天夢の方だよね?」と訊くと、雪梅は「れいとの新婚旅行は地下室監禁束縛アンアンだけだったから、この期にちゃんとしたハネムーンアーンを撮ろうとセバスと計画していたんだ」と応えるのだ。僕は「そういうのって本来、パートナーの僕に真っ先に相談することだよね」と雪梅を睨んだら、雪梅は涼しい顔で、「ソレじゃ、サプライズにはならないでしょう」と僕の唇にキスを落とすのだ。 僕は、「ああ、完全に嵌められた」と大きな溜め息を吐きだした。だから、僕はまたよく解らないあの設定の僕を演じなければいけないんだと思うと憂うつで、「そんなのイイよ」と助け船をだして貰おうと雷梅の方に視線を送ったら、雷梅は丁寧に熨斗までつけて僕に執事長を贈呈してくるのだった。 「清、俺たちのことはまったくもって心配しなくてイイから。ちゃんとピンポイントで天夢くんの可愛い写真を送信するから、清は清で天夢くんの任務をまっとうしておくれ」 と。そして、結羽にはお土産はなにがイイと話題までさらりと変えていた。天夢は「どうしたの?母さま?」と可愛い天使の顔で微笑んでくるけど、「父さまのことを存分に楽しませてあげてね♪もう母さまじゃなきゃ勃起しないっていうくらいに♪」という言葉をつけ加えられたら、僕は泣きそうになってしまった。 そんな僕をおいて雪梅は「天夢が悦ぶようなハネムーンアーンを頑張らせて貰うよ」と応えていた。 「ん?母さま?もうハネムーンアーンで気持ちよくなること考えてんの?本当に母さまは我慢性がない淫乱だよね♪」 ゆいいつの砦だと思っていた結羽にまでそういわれてしまって、僕はそうじゃないよと顔を伏せてしまう。そう、僕は彼らの期待に応えるつもりはまったくないのだが、大好きな雪梅を釘つけにできるような物凄い魅力をなにも持っていないことに気づくのだった。 そんな伏せた僕を雪梅は抱きあげて、優しくキスをしてきた。 「れい、どうしたの?」 心配そうな顔をしているのは、たぶん僕が伏せている理由に気がついたからだろう。だけど、僕はソレを認めたくないから素っ気なく応じた。 「なんでもない………」 そして、雪梅の胸板に顔を埋める。僕がこうするのは、こういうふうに雪梅に優しくされると、物凄く泣きたくなって胸が苦しくなるからだ。雪梅はソレを察したように僕の顎を持つ。 「そう?私はどんなれいでも大好きだよ?拗ねたれいもいじけたれいも、こうやって落ち込んだれいもみんな好きだよ?」 ほら、顔をあげて私にその愛らしい顔をみせてくれないかい?と、無理やりその顎をくいっと上に持ちあげて、僕はいまにも泣きそうな顔で覗き込んできた雪梅の顔をみた。すると。 「………っん!」 雪梅に深く激しいキスをされて、僕は思わず雪梅の首に腕を廻してしがみつく。「れい、好きだよ。愛してる」そう囁かれたら、もうなおさらだ。 新郎新婦よりも熱烈なキスをしていたら、雷梅が咳払いをひとつする。 「ああ、天夢くん、結羽くん、清、明日の準備があるだろうから、もうお開きにしよう」 ほら、水梅も指くわえてみてないでこっちにきなさいと名残惜しいという水梅を引っ張る。そんな水梅は藤梅を棄ててきた劉梅に向かってこういう。 「劉梅ちゃん、ソコで藤梅ちゃんが悪巧みしないかみ張っててちょうだい!」 と。ココのゆいいつの出入り口を指差して水梅が劉梅に頼むのは、水梅は雷梅の命令には逆らえないからだ。昔、雷梅に大きな貸しを作ったらしく、ソレ以来雷梅には歯向かえないらしい。劉梅は劉梅でいち番の特等席を用意されたと喜んでいる心情を隠しつつ、頷いた。 「水ちゃんの頼みなら仕方がないな。いつものように貸しなしでみ張っとく」 天夢は物凄く嫌そうだったが、「俺からも頼む」と雷梅にいわれると、雷梅に甘い天夢は劉梅の護衛を許すことになる。 「劉梅、万がいち、億がいち、母さまになにかあったら絶対に許さないからね!」 そう釘を刺して、「父さま、母さまをお願いね」と雪梅にも僕を託していた。雪梅は「天夢、天夢は兄さんと新婚旅行を楽しんできなさい」といたって普通に天夢を気遣う言葉をかけていたが、内心では僕をどう可愛がろうと悪巧みを立てている。そんな雪梅の言葉を天夢は素直に受け取って、素直に頷いていた。 「じゃ、雷梅、いこうか?僕たちもこのあとすることがあるよね♪」 と。こういうエロいスイッチの入った天夢は僕以上に手に終えず激しいらしい。だから、そんな天夢を雷梅がほっておくハズがないから、僕たちは明日の朝そうとう雷梅に絞られるなと遠い目をした。そんな僕をみて、僕想いの優しい結羽が「天夢兄さまは雷梅兄さまが大好きだよね♪」とソレはもうニコニコとした笑顔をみせるから、雷梅の雷が僕たちではなく避雷針に落ちたとはいわない。  

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