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  結局のところ、執事長は体調不良で欠席で、天夢たちはいき先のトラブルで僕たちと同行することになったらしい。そして、僕のハネムーンアーンは結羽と天夢が雷梅の監督のもと撮るらしく、雪梅は雷梅と今後の日程を話し合っていたようなのだ。 「あの、どうしても僕のハネムーンアーンを撮らないといけないワケ?」 僕はせっかくの新婚旅行を邪魔しているようで天夢にそういう。そういうが、天夢は物凄く怖い顔をしてこういうのだ。 「母さま、母さまは父さまと新婚旅行いってないでしょう」 と。ソレとコレとはちょっと違う気がするが、天夢はこうも続ける。 「ソレに、父さまとの思いでは大切にしないと。僕と雷梅の寿命は似たり寄ったりだけど、母さまと父さまの寿命は雲泥の差があるんだよ」 解っているの、と。僕はうっと嫌な顔をして雪梅にしがみつく。 「雪梅は僕を置いて先に死なないモン。雷梅だって先祖から貰った能力だっていっても所詮はパチもんじゃん。純血の吸血鬼には負けるよ」 「母さま、ソレって屁理屈っていうんだよ。パチもんだっていっても、雷梅は僕の寿命と同じくらいは生きれるんだからね!」 父さまとは全然違うと僕に怖い顔をするのは、僕のこの容姿にも問題があるのだろう。雪梅と初めて逢ったあの日から、まったく変わっていないのだ。 「イイ!母さま、コレは母さまのためでもあるんだから、ハネムーンアーンはしっかりと撮らせて貰うよ!」 天夢はそういって絶対に引こうとしなかった。そんな天夢と違って、結羽は優しく僕の頭を撫でてこういうのだ。 「大丈夫だよ、母さま。天夢兄さまのハネムーンアーンは結羽がちゃんと撮ってきてあげるから心配しないで♪」 と。そして、雷梅兄さまに哭かされる天夢兄さまはとっても愛らしいだろうね♪と、ほくそ笑んでいる結羽が我が子だと強く実感してしまう。そんな結羽に天夢はプリプリだ。 「もう!結羽はそうやって母さまを甘やかす。ダメだよ、母さまにはもっと自覚して貰わないと!」 天夢はそういって頬を大きく膨らませるが、ハネムーンアーンの撮影は断らなかったからオッケーらしい。ソレはともかく、僕に甘い結羽に天夢が甘いから僕は同じだと思った。 「イイの♪母さまは結羽との思いでも残さないとだから、父さまのハネムーンアーンがダメでも結羽とのハネムーンアーンは撮ってくれるモン♪」 ねぇ、母さま♪とニコニコ笑顔でいわれると断るにも断れない。だからっていっても、雪梅とのハネムーンアーンを撮らないと雪梅が拗ねて機嫌を損ねるだろうから、僕は「そうだね」と結羽に応えた後にこうも言葉を続けた。 「雪梅、雪梅も僕とのハネムーンアーンを記念に残した方がイイ?」 と。いまさら僕から撮ってともいえないから問いのようになってしまったけど、たぶん雪梅なら解ってくれるだろう。その雪梅はいっ瞬だけ眉根を動かしたけど、僕がどうなの?と雪梅の唇に舌を這わせて唇を塞ぐと、ふっふと鼻で笑われてしまった。 「れい、素直に撮って欲しいっていってあげればよかったでしょう?」 そして、そう意地悪をいうけど、僕の口の中に舌を割り込ませてくるから、僕はまたエロいスイッチが入ってしまう。だから、ハネムーンアーンの返事をせずに僕は雪梅の太股に股がっていた。 「………っか、………………ぃよ………」 朝もそうだけどさっきもアレほどアンアンやっていたハズなのに、僕の身体は雪梅のモノを物凄く欲しがっていた。さて、始めるとばかりに雪梅の前を手際よく寛げていたら、その間に割り込んでくる大きな手があった。 「はーーーーーーーーい!ハネムーンアーンを撮るのはもう決定事項だけれども、君たち数分前になんていわれたっけ!」 パコパコとヤるのは現地に着いてから、ビデオテープがなん本あっても足りないと雷梅が怒るのは、未だメモリーカードが使えるホームビデオに慣れていないからだろう。 「雷梅兄さま、大丈夫だよ。このメモリーカードいち枚で動画が三百時間は撮れるから」 そういう結羽の手には、どっさりとソレと同じメモリーカードがある。予備の予備だと執事長にたんまりと持たされたらしいのだ。 「ソレに、このメモリーカードが全部壊れても、撮った動画は全部セバスのパソコンに送られるようになっているから」 困るのは電波の送信ができない飛行機の中くらいだよねと、いう。つまり、この大量のメモリーカードは移動中の飛行機用に渡されたようである。保存用に三枚はダビングしておいてくださいといわれているらしく、さっきのアンアンも高画質でダビングを実行中らしい。 だが、雷梅は僕たちを止めに入る。 「結羽くん、そういう問題じゃないよ。モラルの問題で………」 物凄くイイことをいおうとしている雷梅に、天夢は呆れた顔をした。いくら雷梅に甘くっても辛抱しきれないときもあるようなのだ。 「あの、雷梅、いっちゃ悪いと思っていわなかったんだけど、ハメ撮りの監督してる地点でモラルもへったくれもないと思うよ。ソレに、父さまと母さまからセックス取りあげたら、ほかになんも取り柄もない普通の夫婦になっちゃうんじゃない?」 ソレでもイイの?みせ場あるの?と天夢がコレでもかと雷梅に詰め寄る。が、雷梅よりも僕たちの方が物凄く傷ついた。 「天夢、僕たちってそんなに取り柄がないの?確かに、四六時中アンアンヤってると思うけど」 ほかにこう共通の話題みたいなモノってといいかけって、僕はハッタと気がつくのだ。雪梅とデートしたとか、記念日を祝ったということとかの話がまったくないのだ。 「僕たち、なにやっていたっけ?」 「ん?ずっと気持ちよくセックスをしていただけだと思うよ」 雪梅の冷静な返しに僕は項垂れた。この十数年間いっ緒にいて、やっていたのがセックスだけっていう事実に意識が飛びそうになる。 「あのさ、思いでがセックスだけっていうのに物凄く不毛に感じたのって、僕だけ?」 「そう?どのプレイのれいも物凄く魅力的で物凄く可愛いけど、ソレだけじゃダメなの?」 でかけてあれやこれやみるのもイイけど、私はそういうのよりもどんなふうにれいが哭いたとか、どういうふうに反応したとか、どんなふうに気持ちよくされたいとか、そういう方が大事だと思うよと雪梅はいうんだけど、死ぬ直後にみる風景がみんなアンアンと哭かされる僕の姿だけっていうのは物凄く悶えそうで、ソレで興奮したら現世への未練はたち消えるんだろうか?と思ってしまった。  

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