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拾玖
「ひ、酷いわ、酷すぎるわ」
どこぞのおなご言葉でおよおよと泣きながらも、雪梅の身体から離れる曾祖父は蝙蝠だった。
「コウモリ?」
黒い丸い物体に大きな翼がにまい。潰れた鼻にぎょろっとしたつぶらな瞳。コレがほかの動物だというなら、たぶんソレはオニコニクテリスだろう。
「おい、若僧、飛鼠と呼べ」
雪梅の身体にいるときよりも偉そうな曾祖父に僕はカチンときて、がっしっと曾祖父の身体をわし掴むと壁に叩きつけた。すると、おいおいと結羽が呆れたような声をだして僕のことをメッと叱りつけるのだが、前にいっ歩踏みだした右足の下には壁に叩きつけられて潰れてひらりと床に落ちた曾祖父の姿があった。
結羽は僕よりも物凄く手荒く扱って、存分に痛めつけている。そして、しっかりと捻り潰している辺りはそうとう怒っているというアレが垣間みれた。
「曾孫よ、曾孫よ!踏んどる!踏んどるぞ!」
ギブギブと床を翼で叩く曾祖父は、完全に下手に廻っていている。
「あ、ゴメンなさい、曾祖父ちゃま。あまりにも小さすぎてみえませんでした」
結羽はそういうが、物凄く悪気があるようにさらに捻って捻って捻り潰してからようやく曾祖父の身体から右足を退かしていた。そして、曾祖父の片翼を掴みあげるとゴミ箱に勢いよく投げ捨てる。
「アレ?曾祖父ちゃま?」
結羽は自分でやったのにしれっとした顔で曾祖父を探す素振りをみせて、ゴミ箱に投げ捨てた曾祖父の身体をゴミ箱から掴みあげると今度はちからいっぱい床に叩きつけた。曾祖父はぐるぐると目を廻しながら、だが、「曾孫よ、なんて手厚い歓迎をしてくれるんじゃい♪」といっているから、いちおう物凄く悦んでいるようだった。
「変態か………」
僕の口から低くって冷たいとても重々しい言葉が吐かれて、曾祖父は我に返る。
「違う、わしは断じてドMではないわい!!」
そう叫ぶが、股の間から白い液体(白濁)したモノがどっばぁとでている地点で、ソレはもう皆無に近かった。ドMなんだと僕は結羽と顔をみ合わせて、曾祖父の両翼を掴んで結羽に差しだす。握り潰すほどの馬鹿力で翼を掴んでいるから、曾祖父は逃げるに逃げられない。
「あっん♪いぁめて♪」
結羽のデコピン改め鼻ピンにあられもない声をあげる曾祖父は、あられもない声以上に物凄く幸せそうな顔でのたうち廻っていた。
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