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弐拾

  「って!!!!!止めんかい!!!われ!!!」 アレほど、アンアンひんひんと哭いていたのに、急に男らしい顔になった曾祖父(飛鼠)は僕の手からひらりと抜けだすと、僕と結羽の頭をいっ発づつ片翼で引っぱ叩いた。 「「痛!」」 同時に声をあげる僕と結羽はむっと頬膨らますのだが、ソレと同時に結羽は笑いだす。しかも、ソレにつられらように曾祖父も笑いだすモノだから、もう怖いとしかいいようがない。 「い~やぁ、曾~孫!愛いなぁ、愛いなぁ♪」 悶えるようにくねくねと身体を捩る曾祖父に、結羽は右手を差しだす。ソレを寛大な心で掴む曾祖父は物凄く生き生きとしていた。 「ところで、曾祖父ちゃま?どうして、父さまの身体になんかに憑依していたの?」 結羽は真顔になったと思ったらそう首を傾げる。僕もソレには同意でうんうんと頷きながら、結羽と曾祖父を交互にみた。曾祖父は忘れていたとばかりにさっと身なりを整えると、ひとつ咳払いをする。 「あ、コレは失礼」 そして、急に曾祖父は改まった顔をして、僕に片翼を差しだしてきた。 「わしは張家の家長、張擂善(ちょう らいぜん)と申す。以後、おみ知りおきを」 そう丁寧に挨拶をしてきて僕の方が飛びあがる。雷梅の後釜に入ったのがこの曾祖父だということをいまさら知って、僕は畏縮したのだ。 「いえ、こちらこそ挨拶が遅くなってしまって申しわけ御座いません。雪梅の妻の張黎と申します。今後も宜しくお願いします」 慌てて僕も挨拶をして、結羽の頭を下げさす。 「こちらは、次男の張結羽です。長男の天夢はいま席を外していて……」 そう口にしたとたん、「おぉおー、知っておる、知っておる。あのがいな坊ちゃんじゃろう♪」とソレはもうがはがはと豪快に笑って、曾祖父は「お主のこともがいに任されよったからのぅ」という。雷梅が家長の座を曾祖父に戻しにいったとき、天夢も雷梅についていって、いっ緒に挨拶をしたらしい。そのときに、物凄く釘をさされたうえに雷梅の寿命のこともねちねちともの申しされたらしいのだ。 そこらへんは天夢らしいなと思って、もしやと、曾祖父をみると曾祖父はそうじゃよとがはがはと笑って、雪梅のことを天夢に頼まれたというのだ。 曾祖父曰く、天夢はそうとう僕のことを心配をしているらしいのだ。悪いけど、ちょっと様子をみてきてくれない?とソレはもう従者のような扱いで呼びだされたとしみじみと語って、流れる水のようにゆるりと雪梅のことを託されたともいうのである。  

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