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弐拾壱

  「なんというか………、曾祖父様にまで心配をかけてしまって申しわけ御座いません……」 穴があったらもう入りたいと畏縮していたら、曾祖父は「よいよい」とコレまた豪快に笑う。 「もとはというと、コレしきのセックスで引きつけ痙攣を起こしたコヤツ(孫)が悪い」 そう断言して、渇を入れるために雪梅に憑依したともいうのだ。僕は憑依してどんな渇を入れられたのか物凄く心配で、雪梅をみた。すると、う~う~とうなされる雪梅の姿が目に入って、僕は慌てて雪梅を揺すり起こした。そんな雪梅は悪夢をみているらしく、大量の冷や汗をかいて顔を歪めている。 「おうおう、嫁!揺り起こすでない!」 曾祖父はそういって、僕のことを制させた。苦しそうな雪梅を思うと僕はいてもたってもいられなかったから、僕は揺り起こすことを止めなかった。 「コレ、止めんか!わしが投下したウィルスが効かんようになるじゃろうが!」 曾祖父にそう咎められたら、僕は曾祖父のいうことをきくほかない。つまるところ、そのウィルスは張家の秘薬というか、この曾祖父にしか生殖しない特別なウィルスらしく、物凄く万病のもとになるらしいのだ。だが、ソレは張家の血を持つモノにしか効果を示さない微妙なウィルスだった。 「微妙だね!曾祖父ちゃま!」 元気よくそういう罵る結羽に、曾祖父はがおおおおぉと噛みつく。が。 「微妙いうな!曾孫!」 なぜだか結羽とはもろに波長があうらしく、曾祖父はからからと笑って「お主にも分けてやるぞい!」とそのウィルスを撒き散らそうとする。ソレをひらりと交わしって、「結羽はドラゴンの血を選択したから要らない」とあっさりと返品していた。そして当然、曾祖父は酷いわと泣き崩れるという茶番劇をまた繰り広げていた。 そんな結羽についてくる曾祖父もそうだが、無茶ぶりをする曾祖父を片手で捩じ伏せる結羽が物凄く怖いと感じた。が、ソレよりも不思議なことがあって僕は目をしばたたかせて首を傾げる。 「え?属性って選択できるの?」 ひょんな問いのハズなのに、結羽は僕のその問いに間髪いれずに返してきた。 「できるっていうか、もうひとつの血を駆逐、或いは屈伏させるだけなんだけどね」 簡単そうに結羽はそういうが、「吸血鬼はドラゴンの息子に当たるからそう反発はなかったよ」とにっこり笑ってそうつけ加える。僕はそうなんだと苦笑いをして、曾祖父をみた。 すると、現金な曾祖父は「よう!お袋!」などと調子のイイことをいってきて、僕に飛びついてことうとするから片手で軽く払い退けた。床に叩きつけられた曾祖父は「酷いわ、お母様~ぁ」とおよおよと泣く素振りをみせていたが、雪梅がうーうーと唸らなくなったのをみて「お、そろそろ、目覚めるころあいじゃ」と早々に立ち去ろうとする。 急によそよそしくなる曾祖父に僕は首を傾げならもそんな曾祖父の右翼を掴んで、「雪梅にお礼をいわせたいから待ってください」というとやはり曾祖父は物凄く困った顔をする。どうしてそういう顔をするのだろうと思って聞いてみたら、曾祖父は渋い顔をして「コヤツ(孫)は、男夢魔と自覚しないからじゃ」と応じるのだった。  

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