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弐拾陸

  さて、ソレはさておき、渋い顔をする雪梅に執事長はなにやら怪しいモノを手渡した。お納めよと頭を下げている辺りが物凄く訝しい。賄賂とも詫びの品とも取れるソレは、あまり口にだしてはいいたくないモノだった。ソレなのに、雪梅は鋤かした顔で執事長にこういうのだ。 「ソチも悪よのう。だが、コレからもたんまりと可愛がってやるのだから、ソレ相応の収益をコレ以外にも示して貰わぬと困るぞい」 と。ソレを聞いた執事長は、ソレはもとよりと雪梅の懐にさっきの品物とはまた別のモノをそっと忍ばせていた。ソレは、いち枚の紙だった。ソレがなんであるかは、みなくとも解る。 だから、雪梅は鼻を鳴らして嗤った。執事長もニヤリと嗤って、コレで少しは懐が温まりましょうぞというのだ。勿論、金持ち相手に小切手というそんな無粋なモノは渡さない。だからといって、僕のプロマイドという可愛いモノでもない。 そう、コレはだれもが知っているというもう超レアモノである。そして、僕もソレに関してはいっ端の玄人というモノであった。 だから。 「悪いな。だが、れいが喜ぶ。コレはゆいいつ、れいが私以外に熱中しているモノだからね」 雪梅が嬉しそうにそういうのも解る。雪梅もまたその虜となっているからだ。夫婦でそういう趣味を持つのはイイモノだと、雪梅なりに思っているのかもしれない。 だが、タダ問題がひとつあった。お互いにヒートアップしたら口喧嘩になることが多く、そして、お互いに引かないところがあるからよく結羽に止められてしまうとことだ。そう、僕たちの喧嘩は生半可ではないのだ。 だから、結羽はそのたびに即座に天夢に連絡するのだ。すると、電話越しから「また険悪な空気でセックスするきなの!」と天夢に物凄く怒られて怒鳴られるのだ。そして、ソレでも平行線ならこうがなられる。「もう、解った!こうも毎回毎回喧嘩するだったらソレは没収です!」と。 こうなった天夢は、もう恐ろしいとしかいうようがない。喧嘩のもとになるソレを容赦なく取りあげにくるのだ。時間も場所もまったく関係ないみたいに即行で。 当然、そのとばっちりにあう雷梅は物凄く面白くない。ないから、そのたびに天夢に同行してくる。 そして、ブチ切れた天夢といっ緒に不機嫌な雷梅にまで絞られるわ、また、ソコに座しなさいと僕たちふたりの反省会にまでしっかりと首を突っ込んできてもう本当に散々なこととなるのだ。とはいえ、ソレでも学習能力をまったく身につけようとしない僕たちは毎回同じやり取りを繰り返していた。  

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