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弐拾捌

  ソレなら、なぜ張家が世界のトップにいつ続けられるのはというと、張家は福祉を基盤とした経営を行っているからだろう。そして、その支援ともいえるソレはいっ歩間違えれば争いの支柱に入るモノであるが、たぶんソレを揺るがすようなことがないように名家同士がお互いに手を携えているのだろう。 例えば、辛家や呉家に嫁いだ劉梅や水梅などがよい例である。そう、コレは政略結婚というよりもむしろ人質の交換といった方がよいだろう。結婚したからといって、僕みたいに苗字までは変わらないのだから。 つまりだ。その家に生まれたのならば、死ぬまでその家の人間であるのだ。だから、その家にだれかが嫁いできても、その家のだれかがほかの家に嫁いたとしても、改名しないかぎり苗字は変わらない。そして、その夫婦の間でできた子供は嫁ぎ先の苗字を名乗るのが、普通であるからだ。 ソレはさておき、執事長から貰い受けたチケットを大事そうに懐の中で握りしめる雪梅は、天夢と雷梅の待機をどう解除しようか頭を悩ませていた。あのふたりはこうと決めたらテコでも動こうとしないのだ。ソレでいち度、仲を拗らせたことがあって、人様に多大な迷惑をかけたことがあった。 「さて、どうするべきか…………」 そう呟いて雪梅はおもむろに顔をあげたが、その先に流れ始めた画面に釘づけになる。 「セバス、コレはいったい…、──……!!」 どういうことだい?という言葉よりも早く身体の方が動いていた。執事長は慌てて部屋を飛びだしていった雪梅に驚きつつも、そのあとを追う。 執事長が編集をしていた機内での僕と雪梅のアーンの片隅に、この場所にいるハズがない人物が映り込んでいたのだ。ソレは、よく目を凝らさないと解らないくらい小さく、そして、ホンのいっ瞬のことだった。肉親だからこそ、ソレが藤梅だと判断できるくらいだから、結羽や天夢、執事長がみ逃してしまっていても当然のことである。 「雪梅様、どうなされましたか?」 執事長は僕と雪梅に割り与えた部屋に急いで戻ろうとする雪梅に、そう訊ねる。 「ああ、兄さん、………藤梅兄さんがあの飛行機に乗っていたんだ。嫌な予感がする」 そういった雪梅の言葉どおり、僕はそのとき雪梅が思うような大変なことになっていた。 そう、雪梅と入れ換わるように入ってきた藤梅にすべてを預けるようにして、そして、藤梅のなすがまま物凄く気持ちよく哭かされていたのだった。  

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