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弐拾玖
「………っ!…………ぁめ!」
ずこずことだし入れされる巨根に僕は大きく背中を反らして、身体を大きく震わせる。ダメだと解っているハズなのに、頭が真っ白でなにも考えられず与えられる快楽に酔い浸って、僕は荒波に溺れるように幾度も昇天していた。そして。
「艷黎、ダメじゃないでしょう?ほら、気持ちイイっていってごらん?」
黎じゃなく改名前の名を呼ばれて先導されるようにそう耳元で囁かれたら、僕は気持ちイイというしかなく、「………ち、……ひぃ…」ともうソレはあらげもなく大っ嫌いな藤梅を必死に求めて、あろうことか彼にすべてを委ね任せようとしていた。
そんな藤梅は物凄く嬉しそうな顔を緩ませて、僕の首にキスを落とす。しかもだ、鋭く尖った犬歯でうなじをがぶりと噛むのだ。だが。
「やぁ!!!!っか!!」
僕はわずかに残っていた理性で、藤梅ではなく雪梅の名を叫んていた。番の儀式はコレが初めてじゃないのに藤梅に噛まれた瞬間、身体が大きく弾けたからだ。同時に快楽がいっ気に冷めて、嘔吐と悪寒が高波のように押し寄せてくると失いかけていた理性がいっ気に舞い戻ってきたからだ。
「──って!!…………って!!!」
完全に組み敷かれたこの状況で、どんなに助けを呼んだとしてもだれもこないだろう。ソレなのに、僕は叫び続けた。
藤梅はそんな僕に声を荒げるどころか、物凄く優しい声でこういうのだ。
「もぉう、どうして、艷黎はこうやってすぐに反抗的になるかな?あ、もしかして、コレ、そんなに気持ちよくなかったとか?」
と。そして、噛まれたうなじを人差し指と中指で撫であげられたら、僕の身体はマグマのように熱く燃えあがって、あまりの苦しさにのたうち廻った。身体の奥から競りあげてくる熱にせっかく帰ってきた理性が遠退いていってしまう。
「や、…………ぁや、……か、……ふ、か…………」
僕の耳許ではじゃらじゃらと鎖の音がする。いまのこの状況をよしとしてしまっている、この鉄音が憎かった。そう、逃げだそうにも枷と鎖と首輪で繋がれていたら、僕はソレができなかったのだ。
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