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参拾肆
いっ方、そのころ、別室では藤梅が卍字絡めにされて執事長に拘束されていた。
「藤梅様、残念でしたね。まったく、こんな小型音声器で黎様を誘導しようとは、つくづく哀れで汚らわしいとしかいいようがありませんよ」
そういう執事長の手には昆虫のような小型UAVがあった。そう、藤梅はセキュリティの強固なホテルの施錠が外せず、奇しくも、このような小型UAVを使って僕を洗脳させて、ドアの施錠を外させようとしていたのだった。だが、眠りの深かった僕は藤梅の声で変な夢をみて、藤梅のことを好きだと思い込もうとしていたらしいのだ。
ソコに雪梅が慌てて戻ってきて魘されている僕を無理やり起こして、僕は藤梅に洗脳されるという危機から脱したらしいのだが、その後遺症で昨夜の雪梅とのセックスをすべて忘れたようなのである。だから、夢で藤梅に抱かれたことがすべて雪梅とのセックスだと、僕は解らなかったのだ。
ああ、雪梅のちんちんが大きく育っていたのは、雪梅が男夢魔だと自覚したことで本来の男夢魔の力が発揮されたというアレである。
「う、るさい!離せって!」
そう意気がるが、執事長に絞めあげられている姿をみるとそうでもなさそうだ。ソレに、ギブギブと床を叩いている藤梅は物凄く憐れだった。
「本当に、貴方様はまったく持って救いようがないですね。このようことをするのでしたら、いますぐ水梅様のもとにリボンをつけて運送しますよ」
暴れる藤梅にそういって、執事長はどこかに電話をかけていた。
「待って待って、私が悪かったから。許して、セバス。愛してるから!」
「───ああ、嘘ですね。反省の色がまったく持ってみえていないので、強制送還です」
あ、もしもし、南海岸大使館のウンデル様でしょうか?と、執事長はソレはもう丁寧に繋がった先の人物の名前をいう。その名前を聞いた瞬間、藤梅が大人しくなったのは藤梅に物凄く求愛してきている人物の名前だからだろう。執事長が容赦ないのは解っていたが、コレはコレで可愛そうであった。
そう、求愛者のウンデルがだ。早く藤梅のクソ異常な性格を知ればいいのにと、僕は毎回毎回ウンデルに藤梅のダメ写真や動画を送りつけているが、その効果はまったくみれず、逆に求愛行為が物凄く倍増したように思える。
「ぁん!止めて!セバス、ソレだけは止めて!」
電話越しの相手に首を振る藤梅だったが、執事長は鉄壁の鬼だった。
「あ~ぁ、ソレはもう♪はぁ~い♪水梅様のもとへ無事に送り届けてくださるなら、なん十年かかろうともなん百年かかろうともまったく問題は御座いませんよ♪えーぇ、ウンデル様の思うがまま、お好きなようになさってくださいませ♪」
と。執事長はソレはもうウンデルに可愛そうなくらい必死で藤梅のことを託していた。
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