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肆拾壱

  雪梅いわく、画面に表示された文字はコンサートチケットの払い戻しの案内だった。 「セバス?中止ってどういうことだい?」 意味が解らないとしばたたかせた目蓋を大きくみ開く雪梅は、執事長にそう問うていた。問い合わせをしていた執事長は、青い顔をさせている。なにかとんでもないことをしでかしたのか、はっと息を呑むと急いでだれかに電話をかけていた。 のたうち廻っていた僕はというと、なにがなんだか解らないという顔の雪梅に強張っていた。 「………やぁ、…………っか、…………じぃで!!」 火が点いた身体はもう止まらない。ぐちゅぐちゅとかき混ぜてと、雪梅の中指を奥深くまで呑み込もうとしていた。だが。 「ウンデル様、私です。清水容です」 切羽詰まった執事長の声と電話口の相手で、雪梅は直ぐ様いま起こっている状況をすべて把握したのだろう。雪梅はコレでも、世界を従事ることができる頭脳を持っている。そんな雪梅は、僕の中から中指を抜き取った。 「セバス、私と変わりなさい。いますぐにだ!」 声を荒げる雪梅に僕も執事長も吃驚する。執事長は直ぐに雪梅の言葉に従って、スマホを雪梅に手渡した。そして、ソレを受け取った雪梅は電話越しのウンデルにこういうのだ。 「ウンデル、私だ。よく聞きなさい。いま直ぐ、隣でいる藤梅兄さんと婚約会見を開きなさい」 と。執事長はソレはよい案ですと物凄く頭を振って頷いていたが、僕だけは目を白黒とさせていた。 『──えっ?……………よろしいのですか?』 電話越しのウンデルも驚いていたようだが、返ってきた言葉は嬉しいといわんばかりの声だった。僕は悶えていたことも忘れて、雪梅をみた。 「ああ、構わない。貴女なら全世界を敵に廻したとしてもだれも敵わない。なんたって、貴女は全世界で抱かれたい女ナンバーワンなんだから!」 そう、ウンデルは全世界が認める美貌と才能、そして、名誉と財産を持っている。また、性別がアルファの女だから、オメガ、ベータ、アルファのどの人種の性別でも結婚ができるから求婚者が絶えないらしい。因みに、結婚できない相手とは養子縁組でしか家族になれないという。 『そんな、ワタクシは………』 羞じらうウンデルの声を聞いて僕は急いで雪梅からスマホを取りあげると、ウンデルに向かって慈悲を与えた。 「ウンデル、僕、黎だけど。ウンデルが嫌なら嫌だって……」 いってもイイだよと続く言葉を遮って、『艷黎?私だよ。私のことを心配してくれて……』という藤梅の声を聞いた瞬間、僕はとんでもないことをいってしまっていた。 「ゴメン、ウンデル、藤梅とお幸せに。僕、心から祝福しているから。じゃ、また」 そういうと、僕はさっさとスマホを雪梅に返していた。そして、耳が腐るともいう感じで耳を塞いで電話越しの藤梅の声を遮断するのだった。  

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