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肆拾参
僕の耳に哄笑する声が聞こえてきて、ソレが藤梅のモノだと解ると僕は大きく息を吸った。
『──止めて貰えませんか、だって?ねぇ、ソレって、いっ体だれに向かっていっているんだい?』
いくら可愛い弟でも許せることと許せれないことがあるって、前にもいったよね?と、低音でよく聞き慣れたその声は、僕の大好きなエリック・ワールドであるかもしれない。だが、ソレは大っ嫌いな藤梅の声でもあるのだ。
ソレに、エリック・ワールドと雪梅を天秤にかける必要はない。僕の所有者が雪梅であるように、僕のすべては雪梅に埋め尽くされるべきであるのだ。ゆえに、僕がやる行為はひとつ。
藤梅の声が僕の鼓膜に響いたと思ったら、ブッチっという音とともに僕の意識が飛んだ。そして、虚ろな眼差しで薄ら嗤う僕の姿をみて、藤梅に怒っていた雪梅の顔をいっ瞬のうちに青ざめさせていた。
「……………れい……」
僕の名を呼ぶが、もう遅い。僕は物凄い力で雪梅をソファに押しつけると、スマホと雪梅の手をいっ緒に掴んでいた。
「………ふ、か、……して」
トロリとした声で喋るのは、喉奥に持ってはいけない感情が蔓延っているからだろう。
『ん?ああ、艷黎?』
どうしたんだい?と、本来の声に戻った藤梅はニコニコと笑って、呑気にそう聞いてくる。勝者はいつも遅れて登場してくるモノだという空気は、雪梅の意識まで持っていっていた。だから。
「…………ふじ、か、……けっ、こん……………して」
そう僕の口から溢れ落ちる言葉までもが、勝者の歓喜に震えている。いうまでもないが、雪梅の顔には僕のすべてを葬り去りたいという負の感情が沸き起こっていた。
ソレを証言するように雪梅は僕の首を掴んで、力の限り首を絞めあげる。おぞましい顔の雪梅に僕の身体は、いい表すこともできないモノにゾクゾクさせられていた。おしっこをちびってしまいそうなくらい、興奮している僕に雪梅の口端があがる。
「なに?私の嫉妬に興奮してんの?れいの身体は本当にイヤらしいねぇ?」
舐め廻すような雪梅の視線に、僕の身体が勝手に反応した。もっと気持ちよくなりたい。焦らされる行為に、僕の喉の奥が焼けそうに熱くなっていた。
だから、僕は目の前にいる雪梅の顔をみ下ろしながら、藤梅の言葉を心待ちにする。
『───え?』
聞き違いという言葉とともに、もういち度いってくれないかい?という藤梅の声を。
ソレを聞いた僕はもうガマンガできず、おしっこを漏らしてしまった。そう、やたら性的に聞こえて忘我したのだ。
「───ああ、はしたないね♪コレはもうお仕置きだよ、れい───」
うん、そうだね♪と哄笑する僕は、雪梅のナックルとシッパーを寛げていた。ソレから、電話越しの藤梅にはこういってあげるのだ。
「ああ、藤梅、ウンデルと結婚してあげて♪藤梅なら、できるでしょう?だって、藤梅は僕のことが大好きで物凄く愛してくれているんだからさ♪」
と。ソレを聞いて、凍りつく藤梅のことなんか僕は知らない。ソレよりも早く僕にお仕置きとご褒美をちょうだいと雪梅の唇に僕の唇をねっとりと這わしたことはいうまでもないだろう。
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