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松本は慣れた風に体位を変えた。 私をシンクに座らせると足の間に割って入り、容赦なく突き上げてきた。 「俺……出したいな、久也さんにぶち込みたい……っ」 奥深くまで届く淫らな律動に私は恍惚となる。 無意識に松本の脇腹に両足を絡めて、自分からも摩擦を強めた。 松本はさらに前のめりとなって、眉根を寄せ、声を上げる。 「あ、だめ、俺、もぉ中、中出すよっ」 が、私は咄嗟に拒んだ。 「中は駄目だ!」 かろうじて残っていた理性が言葉になった。 一瞬、松本はしょ気た犬みたいな顔をした。 結果、射精寸前だった彼は私からペニスを引き抜くと、信じられないことに、私の顔に精液を。 「うっ」 白濁を顔に浴びせられた私は半ば呆然と流しの前で脱力した。 眼鏡のレンズにも飛び散っている。 後で念入りに拭かなければ。 「んぐ」 息の荒い松本は私の口腔にペニスの先を押し込んできた。 「はぁ……はぁ……久也さん」 舌の上に次から次に溢れ出る彼の精液。 口の中で力強く脈打つ肉塊。 彼と同じくまだ呼吸の落ち着いていない私は、仕方ないので、鼻腔で苦しげに息をしつつ白濁を飲み込んだ。 「ん、ん、ん」 苦い。 青臭い。 しかも止まらない。 だけど何故だか身をもって彼の絶頂を感じていると、そんなに不快ではなくて。 口で呼吸ができずにつらそうにしている私を見兼ねたのか。 松本は腰を引いた。 舌の先から濃厚な白濁の糸がぷらんと伝う。 まだ熱を失っていない彼のものを眼前にして私は耳まで紅潮した。 「発情期なのか、君は」 向かい側の、恐らく浴室に通じているドアに背中を寄りかからせて、松本は私の言葉に小さく笑う。 「俺、二週間、セックス断ちしてたんです」 「……たった二週間」 「久也さんとずっとシたかったんです」 「は?」 「だから」 シンクの前で座り込む私に彼は初めて言葉を濁した。 自分もフローリングに膝を突いて目線の高さを私に合わせると、思いも寄らない台詞を口にした。 「俺、今まで誰か一人に傾くなんて、一回もなくて」 「……」 「だからよくわからなくて」 そう言って、まだ自分自身の精液が纏わりつく私の唇にキスをしてきた。

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