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4_めかくしごっこ

「愛してます、久也さん」 「え……」 「俺と一緒になってください!」 「そんな、私には妻が……」 「駆け落ちしましょう!!」 「……私なんかでいいのか?」 「久也さん!!!!」 なんて、そんな寒々しい展開、再放送の昼ドラでしかあり得ない。 だけどもしもあり得たら、その時は、不慣れな幸福感に満たされすぎて窒息死してしまうかもしれない。 久也さんの日常を壊すつもりはない。 家庭、仕事、ありふれていながらも実は貴い現実世界は久也さんの宝物だ。 今の俺には久也さんが宝物。 単調に過ぎ行く色褪せていた日々の中で出会った、レム睡眠状態に近かった心には目映く鮮やかな、なくしたくない存在。 不幸せになんかさせない。 ねぇ、久也さん……。 「ねぇ、久也さん、気持ちいいですか?」

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