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心ここにあらず。 今夜の久也は正にそういう状態にあった。 「久也さん、よくなかった?」 「……」 ベッドの端でもぞもぞとベルトを締める久也に問いかけても返事をしてくれない。 退室時間が迫っているにもかかわらず、真っ裸でいる松本はワイシャツを身につけた背中に抱き着いてみた。 「久也さーん」 「……もう時間になるぞ。早く着替えたらどうだ」 うわ、めちゃくちゃ冷たい。 ショックで心臓止まりそうなんですけど。 何だろう、俺、今日、そんなに下手だった? 何か悪いことしたかな? 傷つけるようなこと、言ったかな? 「久也さん、何で怒ってるの?」 「……別に怒ってなんか」 「いーえ。いつもと違います。いつもの久也さんじゃない」 久也の肩に額をくっつけた松本は正面へと回した両腕に力を込める。 「どうしたの?」 「……あの子」 「あの子?」 「あの女の子……」 あの女の子。 そう言われて、しばし記憶を漁り、松本はつい先ほど自分が告白されていたことを思い出した。 ……やば、久也さんがいつもより早めに来てくれたことが嬉しすぎて、すっかり忘れてた……。 「私みたいな男といるよりも、本当は……君は、ああいう女の子と一緒にいるべきなのに」 こんな不毛な関係、私の方から断ち切るべきなのに。 ずるずると続けてしまって、何だか、自分がみっともなく思えてきて。 不甲斐ない気がして……。 「何ですか、それ」 ちょっと待ってよ、久也さん。 それって、あれですか、もしかして? 断ち切るべきなのに、みっともなく思えるのに、不甲斐ない気がするのに。 それでも俺と一緒にいたい、って、そういうことですか? 「……」 背後から松本に抱き締められた久也は、伏し目がちに物憂げな表情を見せていたのだが、その眼差しはみるみる動揺の色に浸されていって……。 「き、君は……どうして今の話で勃起している?」 「ごめんなさい、感極まったというか」 俺に対する久也さんの執着が垣間見れて、つい、嬉しさの余り欲情しちゃいました。

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