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「おい、もう本当に時間が……」
「あ~じゃあ、ちょっと待っててください、自分でしちゃうんで」
「えっ?」
久也が振り返ると、すでに素早く身を翻した松本は反対側のベッドサイドに腰掛けて、ティッシュ片手に自己処理を始めていた。
「……君は本当、日がな一日発情期だな」
物憂げだった表情に苦笑を滲ませ、目元を薄赤く染め上げた久也は呆れ気味に呟く。
ある程度着衣を済ませていた彼は磨り膝でベッドを進むと、自慰に集中している松本の背中にすっと身を寄せた。
瞬く間に勃起した若いペニスを扱き立てる手に触れる。
「私が……するから」と、驚いている松本にそう言って、自分の手で彼のペニスを扱き始める。
目の前のうなじに恐る恐る唇を近づけ、そっとキスをして、軽く歯を立てる。
「あっ……久也さん……!」
松本は久也の手にすぐさま達した。
別れ際に久也はさり気なく告げた。
「来週、出張なんだ」
最終の電車を目指す人々に紛れて見送りに付き添ってきた松本は思い切りしょ気た顔をする。
「そうですか。じゃあ会えないですね」
「……いや、あの」
何故か言葉を濁し、松本から視線を反らして頬を紅潮させた久也は斜め下に向かって台詞を続ける。
「よかったら、君も……来ないか」
「……」
「ビジネスに二泊するんだが、大学もあるだろうし、無理にとは……」
松本が久也からのお誘いに乗じたのは言うまでもない。
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