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「面接はどうでした?」
「ああ、何人か辞退した応募者もいたが、ちゃんと事前に連絡が来ていたし、特に問題なく進んだ」
「面接って、その大学でしたんですか?」
「いいや、レンタルオフィスで」
「へぇ。あ、飲み物は生ビールでいいですか?」
「ああ」
「料理もいくつか頼んじゃいましょうか。とりあえずポテトに、後は、あ、たこわさ食べたいな」
「頼んだらいい」
「揚げ出し豆腐もいいですよね。唐揚げとか、この本日オススメのお刺身とか、いっちゃいます?」
「君の好きなものを頼んでいい」
ホテルから近い繁華街の一角。
程々に客の入りがある居酒屋のカウンターで松本と久也は並んで座っていた。
「君はどうしていたんだい」
上着を脱いでネクタイをほんの少し緩めた久也は、熱々のおしぼりで手を拭きながら注文を済ませた松本に問いかける。
「三時くらいにこっちに着いて、チェックイン済ませてから、ぶらぶらしてました」
「お城には行かなかったのかい。あそこは石垣が立派で有名らしいが」
「お城の石垣ですか」
「あまり興味がなさそうだな」
「そうですね、ぶっちゃけ」
久也は微かに笑った。
居酒屋にいる久也さんって、何だか、色っぽいな。
和服着た女将ってわけじゃないんだけど、ただネクタイした普通の会社員の格好なんだけど。
この距離感とか堪らないよな。
そもそも一緒に外食するのって初めてだ。
久也さんの終電を気にして、待ち合わせ場所で落ち合えばラブホ直行、そんな贅沢な時間は持てなかった。
お宅訪問プラスお泊まりの時とはまた違う刺激。
今夜、久也さんは帰宅する必要がない。
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