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ホテルの部屋のドアを開けるなり二人は縺れるようにして飛び込んだ。 ドアが完全に閉まるのも待てずに壁際でキスをした。 「んっ、っ、っ……ふ」 互いにコートやダウンジャケットを羽織ったまま弄るように抱き合う。 アルコールの味が残る舌先を頻りに絡ませ合って、舐め合って、濡らし合う。 息継ぎも疎かに熱いキスに心身共にどこまでも溺れた。 「んぅ」 松本の片膝に両足を割られ、擦り上げられて、久也は喉を詰まらせる。 飲み込めなかった唾液が下顎へとふんだんに滴り落ちていく。 松本は、やっと久也のマフラーを外して衣服の一つ目を彼の体から剥ぎ取った。 「ん、久也さんの、硬い……っ」 下顎へと続く濡れた跡を唇で拭い、再び口腔に戻って舌尖を差し入れ、絶え間なく粘膜を突きながら上擦る声で松本は囁く。 壁に押しつけられた格好の久也は火照った眼差しで松本を見つめた。 「君だって……」 「うん、勃ってる、ほら」 コート越しに久也の双丘を両手で掴むと、下肢を密着させ、股間同士を恥ずかしげもなく強めに擦り合わせる。 「ぁ……っ」 「ね、もういい? 久也さん、挿れていい?」 上唇を舐め、耳朶を舐め、首筋を舐め、松本は次から次に見境なく久也の肌へ口づけを落としていく。 すでに二人とも息が荒い。 フロントにて何食わぬ顔でそれぞれキーを受け取ってからまだ五分も経っていないというのに。 四階の久也の部屋に到着した途端、スイッチが入った。 「久也さん……」 終電を気にする必要はないというのに、いつもより余裕のない焦った手つきで、松本はコートも脱がさずに久也のベルトへ真っ先に手をかける。 その時、今、松本が最も聞きたくないとする言葉を久也は口にした。 「ま、待ってくれ」 松本は恨みがましい目つきで久也を見た。 「……家に電話する」

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