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「何か質問があったらどうぞ」
レンタルオフィスの会議室にて、久也は履歴書の束を片手に面接へやってきた応募者を見回した。
ああ、それにしても、昨夜はまったく……。
『よすぎて……死んじゃいそうです、俺』
部屋の出入り口すぐそばで壁に手を突かされて、立ったまま……後ろから……。
『ちゃんと隅々まで洗ってあげますね』
挙句の果て、一緒に風呂にまで……あんな狭いバスタブに男二人、狭いし寛げないし、疲れをとるどころじゃなかった。
胸やら股間やら節操なしに泡立てられて……。
三十路男の体なんぞを洗って何が楽しいんだろうか。
『どこが一番いいの? ここ?』
彼に触られるところ全てが格段によくて、いつも、理性が飛んでしまう……。
『すごい……あったかいよ、久也さん……』
私の中で感極まって上擦る声を聞くと、全身が、こう、溶けていくというか……蕩けていくというか……。
「……」
流れる静寂に久也ははたと我に返り、改めて応募者を見回した。
昨夜の情事を脳内で反芻して無駄に色気を放つ久也を、男女問わず、面接にやってきていた応募者は食い入るように凝視していたのだった。
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