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松本はサイドメニューのポテトやナゲットなども買ってきていた。 久也に過剰に接近して座っているので、自分の膝上に置いた紙袋に入れっぱなしにしており、がさごそと底から取り出す。 「久也さーん」 フィッシュバーガーを半分ほど食べ終えていた久也は横を見た。 松本が手にしたナゲットを空中に掲げていた。 久也が指先でそれを受け取ろうとすると、悪戯に遠ざけて、首を左右に振る。 「あーん、してください」 は? いい年した私がどうしてそんな真似をしなきゃならないんだ? 若い子同士のカップルならまだしも、私は三十路で、男だぞ? 誰がそんな真似を……。 「……」 久也は松本に言われた通り口を開いた。 慣れない行為に頬を赤くして、不自然なほどに視線をあらぬところへ縫いつけて。 そんなぎこちない久也の様子に松本は笑みを深めて、彼の口元へ、手を近づける。 恐々と開かれていた唇に肉片をそっと突っ込んで舌の上に乗せる。 久也は柔らかな旨味ある食感をろくに味わうこともせずにあたふたと飲み込んだ。 「う」 「ああ、ちゃんと噛まないと、久也さん」 喉を詰まらせた久也に笑い、松本は、自分用に買ってきていた烏龍茶を口に含むと。 久也を上向かせて口移しで与えてきた。 「んぅっ!?」 驚いた久也は半分も飲み込めずに下顎へと烏龍茶を零してしまった。 「久也さん、粗相です」 そう言って唇から伝い落ちていた爽やかな味をべろりと舐め上げる。 「やっやめっやめないか!」 「何がです?」 「食事くらい落ち着いてとらせてくれ!」 「落ち着いてますよ?」 「ど、どこがだっ」 目に涙まで浮かべて咳き込む久也は悪気もなさそうに平然としている松本からそっぽを向いた。 もう私にはついていけない、恥ずかしいにも程がある! 食べかけのフィッシュバーガーを躍起になってぱくつく久也の背中を松本はナゲットを齧りながら見つめていた。 紙袋にはLサイズのポテトがたっぷり残っている。 てりやきバーガーをあっという間に平らげた松本はポテトをつまみ始めた。 「久也さーん」 ああ、嫌だ、嫌な予感がする。 「ねぇねぇ、ほらほら」 松本があまりにも無邪気に自分を呼ぶので久也は渋々そちらを向いた。 長めのポテトの端を口につまんだ松本が「んー」と反対サイドを突き出している。 これは、あれか、所謂ポッキーゲームの真似事……というやつか? 反対側に食いつけ、と私に指図しているわけか? 「んー?」 根気強く待つ松本に久也はやはり折れた。 松本の肩に片手を置くと、伏し目がちに、突きつけられたポテトの端をおっかなびっくり口に含む。 笑みを含んだ、小憎たらしい松本の口元目指して徐々にポテトを食べ進めていく。 松本より先にポテトを噛み千切ってしまえば、それで終わりだった。 久也はそうしなかった。 そのまま、二人の唇は、重なった。 ポテトの食感伴うキスを久也自らが望んだわけで。 クチャクチャと、互いの唇の狭間でマナーの悪い食事に耽る。 食欲と性欲が入り乱れる不埒なディナーに。 「もっと、食べさせて、久也さん……?」 時に松本は久也の食べ残しを舌の上から直接攫った。 「久也さん、もっと、食べたい……?」 餌付けされるように、久也も、松本から唇伝いに咀嚼する。  「ん……もっと……」 「……うん、お腹いっぱいになるまで……ね」 いつしかベッドに倒れ込んで緩やかに下肢を擦り合わせながら。 行儀の悪さをエスカレートさせて、はしたない欲望を露にして。 理性など、とっくに、自ら投げ捨てていた……。

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