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6-16
「恥ずかしい、はナシですよ」
下肢の火照りによって覚醒した松本はかつてない体勢を久也に欲求してきた。
「シックスナイン、したことあるでしょ?」
「シックス……?」
「……嘘でしょ、久也さん」
毛布を跳ね除け、逆向きに松本を跨いだ久也の顔の真ん前には、未だ張り詰め続けるペニスが。
足を開いてシーツに両膝を突いた久也の股下には松本の顔が。
「ん……ふ」
反り立つ肉茎を口腔に再び迎え入れ、顎の疲れも何のその、真摯に舌をそよがせる久也の振舞に松本は真心込めた礼をする。
すぐ頭上にある久也の双丘へするりと両手を這わせ、尻の肉を左右に押し開いて、後孔を露出させる。
昨日、屹立した隆起で幾度となく可愛がったそこは時に物欲しげにひくついて、周辺には白濁をこびりつかせていて。
松本は両方の親指でさらに後孔を拡げると舌先を捩じ込ませた。
「あ……っ」
久也は頬張っていた亀頭を吐き出し、松本の真上で仰け反った。
「ダメ、待って、もナシですよ、久也さん?」
くぐもった声で先に久也に牽制を強いると、松本は、突き入れた舌先を卑猥に動かす。
ぷるぷると震える双丘の膨らみをじっくり揉みながら、自身が放った白濁を啜り上げる。
久也は含みかけていたペニスをまた吐き出して声を迸らせた。
「あっあっあっ……や……っ」
松本は自分自身が有していた肉欲の雫を平然と吸いまくる。
添えていた両方の親指までも後孔に捻じ込んで、ぶちゅぶちゅと抜き差しする。
「あ……あ……」
「あ……痛いよ、久也さん……そんな握ったら……」
「だ……だって……ひっ」
親指で犯されながら勃起していたペニスにむしゃぶりつかれて、注意されたばかりであるにも関わらず、久也は縋るように松本の肉茎を強く握り締めた。
「……久也さんってば」
松本は痛みに目元を歪め、でもどこか嬉しげに久也の粗相を見過ごした。
びくつく尻を鷲掴みにし、小刻みに揺らして、久也のペニスに下から貪欲に食らいつく……。
「ただいま、久也さん」
天井を向く松本の肉茎を後ろ手で支え、久也は、腰を落としていく。
熱い昂ぶりの輪郭が身の内で痛いほどに感じられる。
締めつける後孔を通過していく竿との擦れ合いに紅潮した全身が歓喜する。
松本に跨る久也は濡れた眼差しを下に向けた。
他愛ない揶揄めいた台詞の内容とは反対に、仰臥する松本は、切なげな微笑みを浮かべている。
唇を噛んだ久也は真下でざらつく茂みと重なる位置まで腰を落としきった。
彼の腹に両手を突いて、きつく閉じていた唇を何度か開閉させ、しどけなく息をついた。
「……おかえり……」
久也の言葉に松本は小さく笑った。
両腕を伸ばすと、太腿や、膝に触れてくる。
久也は一度深呼吸して律動を始めた。
「君の……昨日より……奥まできてるみたい、だ」
「本当?」
「昨日より……かたくて……熱くて……」
「うん」
「私も……いいよ……」
前立腺に絶え間なく注がれる刺激が心地いい。
何だか全身がペニスになったような気分だ……。
「俺……ずっと挿れてたいな、久也さんに」
「今日……帰らないと……」
「……そうだね」
唐突に容赦なく突き上げられた。
急な猛攻に久也は弓なりに背を反らし、奥を穿たれた際どい刺激で軽く達した。
射精にまでは至らず、反り返ったままのペニスの先からカウパーを次々と溢れさせる。
喘ぐ久也は動くのを放棄してしばし天井を見上げていたが。
ずるりと我が身からペニスが引き抜かれると背筋をぞくりと戦慄かせた。
「ね、後ろから、いい?」
そそり立つ肉茎を露にした松本は妙に忙しない手つきで久也を四つん這いにさせようとする。
「……どうしたんだ、いきなり」
「こっち見ちゃダメです」
「え?」
今、久也さんと向かい合ってたら、泣いちゃいそうです、俺。
ベッドではなく、狭い床の上で、松本は久也を突く。
背中を反らして獣じみた動きで腰を揺らめかせて残酷に追い詰める。
這い蹲って静止することなく身悶える久也の背中を見つめて。
ぽつりと落ちた涙の雫は汗と一緒になって消えた。
それから。
松本は久也と連絡がとれなくなった。
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