54 / 130

7-4

「なぁなぁ、合コン来いよ、松本」 「……」 「楽しいって」 「……や、パス」 「んだよ、今、ぐらついたくせに」 そう。 確かにぐらついた。 このまま連絡のつかない久也さんのことを引き摺って、どうなるのか。 どうもならない。 それまでの履歴を拾い漁ったりして、更新は一向にできずに、行き止まりでストップしている状態が続くだけ。 それなら、もういっそ、リセットして、全削除して、初期化して。 つまり全てなかったことにして次を新しく始めればいい。 ま、ゲームとかスマホじゃないんで。 そう簡単にまっさらに生まれ変われるわけ、ない。 何だか萎えてしまった松本はテーブルに片頬をぺたりとくっつけてじっとしていた。 今夜、お向かいさんの飼い犬は大人しい。 発情期が過ぎたのかな。 俺はどうなんだろう。 マッチョがムキムキに、の画像を見て、ちょっと興が削がれた松本はノートパソコンをぱたりと閉じた。 今頃、久也さん、何してるかな。 ふと頭の中に浮かんだ他愛ない問いかけ。 次の瞬間、がむしゃらに頭を掻き毟った。 ああもう、らしくない、らしくない。 なんかもう馬鹿みたい。 逐一メールのチェックして、一人寂しくしこって、合コンどうしようか迷って。 馬鹿だ。 よし、もう、こうなったらいっそ、久也さんを。 拉致して監禁しちゃおう。 一般常識として及んではいけない領域に思考が及んだ松本は、すくっと立ち上がった。 下だけジーンズに履き替え、ルームウェアの上に厚手のジャケットを羽織ると明かりも消さずに颯爽と部屋を後にし、スキップでも始めそうなテンションで通路を進む。 もう弁解も許しも聞かないですよ、久也さん。 俺、なんか、脳内軽くいっちゃったみたいです。 嫌がっても、久也さんのこと、縛って、エロいこと、いっぱいしちゃいますよ、あはははは……。 ろくに計画も立てず、ふと頭に浮かんだ衝動に浮かれて、松本は階段を滑るように下りた。 路地へ出て一先ずタクシーを呼ぼうと、ポケットに突っ込んでいたスマホを取り出そうとする。 くぅ~ん

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!