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「松本~飲んでるか!?」
幹事の友達が肩に腕を回してくる。
久也のことが気になって、ちっとも酔えない松本はジロリと友達を睨んだ。
ああもう、こういう事情だって、メールで報告しようかな。
ああもう、そんな時間も惜しい気がする。
今すぐ久也さんに身の潔白を証明したい。
「え、松本ぉ?」
友達を両隣にいた女子二人に押しつけると、スニーカーを脱いでいた松本は四つん這いとなって、移動した。
かろうじてつくられていた境界線を越えて隣のレジャーシートへ。
呆気にとられている年上の方々にぺこぺこ挨拶し、一番偉いと思われる中年男性に一先ず声をかける。
「すみません、友達が泥酔いしでるんで、ちょっど避難させでもらっでもいいですか」
酒が進んでビールから焼酎に切り替わっていた中年男性は別段気にする風でもなく、機嫌のよさそうな声色で「いいよ、好きにしなさい」と、赤ら顔で笑いながら言った。
上司がそう言うのならば、と他の面々も仕方ないという風に笑い合って、和気藹々と宴を再開させる。
一人、久也だけがその双眸を見張らせて呆れ返っていた。
松本はお馬さん状態でのそのそ這っていくと、彼の隣にさり気なく落ち着いた。
「すみません、お邪魔します」
「……」
「桜、綺麗ですね」
久也は缶を傾け、ちょっとビールを飲んで、浅く頷いた。
他の面々が会話に花を咲かせているのを確認して、小声で、松本はまた話しかける。
「……すみません、あれ、合コンです」
「……」
「でも、ただの花見っで聞かされでで、女子同伴なんで知らなぐで」
久也は返事をしない。
桜の下で群がって酒を飲み交わす人々をぼんやりとした眼差しで眺めている。
主任、機嫌、直してくださいよ。
……なんちゃって。
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