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「ゴールデンウィーク、私は仕事だ」
「……今の発言で熱が上がりました」
「だけど一日だけ休みがとれそうだから」
やっとプリンを食べ終わった松本から空の容器とプラスチックのスプーンを受け取り、流し台に持っていく。
次にミネラルウォーターと薬を三錠、松本の両手に握らせた。
「休みがとれそうだから、の……次は?」
久也はクローゼットから適当なシャツとタオルを取り出すと、松本の足元に置いて、ベッド前に腰掛けた。
「次は、の先は君が決めていい」
「わぁ……じゃあ、映画」
「どんな?」
「ホラーとか」
「勘弁してくれ」
「じゃあ遊園地」
「随分飛躍したな」
「水族館、動植物園、アウトレット」
「人ごみは苦手だ」
「じゃあ全部却下じゃないですか」
「薬、飲んだかい」
松本はごくりと風邪薬を飲み込んだ。
シャツを脱いで、次のシャツを着ようとしたら、久也に止められた。
「汗を拭くから」
そう言って、ベッドに乗り上がり、松本の背中にタオルを押し当てる。
「臭くない?」
「臭くないよ」
しっとりと湿る肌を加減して拭いていく。
気持ちがいい松本は、子供のように欠伸をして項垂れた。
「今、寝たら駄目だぞ」
上着を脱いでシャツの袖を捲っていた久也に注意される。
眠たい松本はこくんと頷いた。
普段なら、こんなことをしていれば恐らく、いや絶対に、がばりと来るはずだろう。
こんなにも大人しいなんて、本当に、四月の君は弱りやすいんだな。
あ、黒子だ……。
滑らかな背中につい見とれていた久也。
松本がクシャミをしたので、慌ててシャツを着るよう促し、ベッドから降りた。
そして松本が今一番聞きたくなかった言葉を久也はぽつりと口にする。
「そろそろ終電の時間だ」
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