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ああ、終電なんて、この世からなくなればいいのに。
いつになく子供じみた松本が拗ねて毛布に頭ごとすっぽり潜り込むと、久也は鍵をちゃんとかけるよう声をかけて。
部屋を去っていった。
途端に重みを増す静寂。
不安や寂しさが再び募る。
それらは久也が来る前に感じていたものと比べ、さらに度合いが増していて、松本にずしりとのしかかってきた。
久也との心安らぐひと時があった分、切り裂くように、松本の胸を傷つけた。
こんな気持ちになるくらいなら、久也さん、来ない方がよかった。
どうせ俺を一人にするのなら、最初から来ないで、ずっと放置してればよかったのに。
……もちろんそんなの嘘だけど。
松本は毛布の中で咳き込んだ。
唸って、寝返りを打ち、丸くなる。
明かりを消すのも億劫な彼はしばらくそのままじっとしていた。
きぃ……
微かな音が静寂に響いて、ほぼ寝かかっていた松本は身じろぎ一つする。
戻ってきた久也はベッドの端にそっと腰掛けると、すっぽり隠れている松本の頭を毛布越しにそっと撫でた。
「んん……」
大きく寝返りを打った松本の顔が毛布の上に現れる。
「……久也さん?」
目を開いた松本に久也は微笑みかける。
次に瞼を閉じれば、松本は、深海に沈んでいくような眠りに落ちていった……。
朝、目覚めると久也の姿はすでに部屋になかった。
大分軽くなった体をベッドから起き上がらせて、カーテンを開き、松本は盛大に関節を鳴らして背伸びをする。
「ふわぁぁあ……」
つられて欠伸が出た。
目元を擦って、顔を洗おうと、洗面所へ行きかけた松本だったが。
テーブルに置かれたメモが視界に入ってぴたりと足を止めた。
まるで見覚えのない、真っ白なメモ用紙に、端整な文字が並んでいる。
薬は常備しておくように!
仕事、行ってきます
お大事に
「このメモ、永久保管しよ」
ああ、その前に。
松本は枕元に置いていたスマホをとると、ぱしゃり、なんてことはないメモ用紙を撮影したのだった。
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