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12-4
「ん……」
背後へ顔を傾けさせた久也の唇をそっと啄ばむ。
砂糖もミルクも入れなかったブラックコーヒーの苦い味が、した。
前屈みになった松本に深いキスを強請られて、久也は、少々きつい体勢でありながらも迎え入れた。
首筋を反らせてうっすらと唇を開く。
するりと滑り込んできた、松本の舌先。
じゃれつくように口腔で戯れてくる。
相手をしてやれば、向こうの唇へも招かれ、微熱に温む唾液を味合わされた。
「……ふ」
「久也さん、俺……したいな」
久也の下唇を舌尖でなぞりながら松本が囁きかけてくる。
「久也さんは?」
「え……」
「したくない?」
「……だって、まだ……午前中じゃないか」
「ビジネスの時、朝イチでしたじゃないですか」
「あ、あれは、その」
滑らかな頬からしっとりとした首筋へ、転々と口づけていき、耳たぶを舐め上げる。
「あ、こら……」
「そんな飛ばさないから……そうですね、午前中に一回、午後に一回?」
「……そんな決められても」
座椅子の背もたれに久也を寝かせ、眼鏡のずれを直してやると、松本は紅潮する顔を覗き込んで悪戯っぽく誘う。
「ね、しよ……?」
「……」
Tシャツの裾に手を差し入れた。
そのまま、上へ、皮膚伝いに捲っていく。
久也は僅かに身じろいだだけで松本の手を止めようとはしない。
明るい日差しが差し込む部屋のほぼ真ん中、久也の肌が胸元まで露になった。
「……カーテン」
「え?」
「閉めてくれ……窓も、少し、開いてる」
松本は悪戯っぽい笑みを浮かべたまま、久也のせめてもの要望を、さらっと聞き流した。
燦々とした日の光の中、頭を屈め、薄ピンク色の乳首を上下の唇できゅっと摘まむ。
「あ……っおい、カーテン! 窓!」
思わず大きい声を出した久也を今一度覗き込むと、人差し指を立て、動揺している双眸に注意する。
「大きい声出したら外に聞こえちゃいますよ?」
「い、いや、だから閉めてほしいと」
「大丈夫ですって、聞こえませんって」
「……矛盾してるぞ」
呆れた久也は覆いかぶさっていた松本を退かすと、自分で窓を閉めようと、座椅子から窓辺へ移動しかけた。
松本がそれを阻んだ。
背中から羽交い絞めにすると、ベルトもファスナーもない、実に無防備なゴムウエストのハーフパンツの内側にするりと手を……。
「あ」
いきなり下着越しに触れられて覚えた刺激に久也は竦んだ。
慌ててそばにあった収納ボックスにしがみついたところを、松本にのしかかられて、身動きがとれなくなる。
広げた五指で股間を揉みながら、正面に回した手をシャツの中に潜らせ、松本は乳首の一つをやんわり抓った。
「あ……だめ、ッ」
窓を閉めるどころではない。
突然始まった両手による愛撫に久也は驚くのと同時に、成す術もなく感じて、切なげに呻吟した。
「服は汚していいけど……下着は自前ですもんね」
今現在、久也が身につけている唯一の自前の衣類が汚れないよう、松本はハーフパンツと共に下着を早々とずり下ろした。
ボックスにしがみついたままの久也のシャツを再び捲り上げ、背筋に沿って舌をそよがせ、ペニスを直に撫でる。
「もういっそ今日は一日ノーパンでいましょうか」
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