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結婚式、当日。 積み重なった睡眠不足で頭痛はするわ、胃痛がするわ、松本は最悪のコンディションで祝福すべき日を迎えることとなった。 身支度を整え、午前中に高速バスで三時間かけて地元に帰り、同じく結婚式に招かれている友達の阿久津(あくつ)と落ち合った。 「松本~、俺緊張して吐きそう」 緊張など不要な受付を任されているこの阿久津は、とにかくおっちょこちょいな奴だった。 ホテルで開かれる式までまだ時間があり、ファミレスで時間を潰すことにしたのだが。 ドリンクバーで他の客とぶつかり、早速、スーツにジュースを引っかけていた。 「わ~どうしよ、やばい」 「一先ずおしぼりで拭いたら」 何か俺までとんでもない失敗を仕出かしそうで不安になる……。 しかし今朝方、松本はすでにもっと不吉な目に遭っていたのだ。 前に久也と温泉旅行に出かけた際、松本はお土産屋で小さな硝子細工のイルカを二つ買った。 一つは自分、もう一つは久也にあげた。 自分たちに見立てて恋人同士のイルカとし、自分は久也イルカを後生大事にとっておこうと、こっそり宝物にしていた。 今日、お守りとしてスーツのポケットに入れておこうと、久也イルカを綿の寝床から久し振りに取り出そうとしたら。 がちゃん 落として割ってしまったのだ。 そもそも朝一番のアレが究極の痛手だった。 不吉以外の何物でもない。 慣れないイタイコトなんてするもんじゃないな。 だけど、どうしても、この緊張に打ち勝つために久也さんのことを肌身に感じていたくて。 ……俺、どんだけイタイんだよ、まじで。 しかもスマホの充電忘れて残り僅かだし、ホント、最悪……。

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