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「何が目的なんだ」 行きつけのファーストフード店に呼びつけたその男はえらく怒っていた。 そりゃあ、そうだろう、奥さんの不倫相手だと自ら前もって名乗っていたのだから。 「な、何だ、何がおかしい!」 どう考えても奥さんが悪いというのに、不倫に走ったのは多忙な自分のせいだと言い出すものだから、その真面目ぶりに思わず吹き出したら、さらに怒った。 綺麗に整った顔立ち、銀縁の眼鏡、清潔感と真面目さを備え、きっと初対面の人間誰もが好印象を抱くだろう、その容姿。 ラブホのベッドで眠っていた相手の携帯を暇潰しに弄っていたら、そんな男の画像に行き着いた。 この人はベッドの上でどんな風に乱れるんだろう? 「こんなの、もぉ、無理……!」 彼は初めてのくせにびしょ濡れになって俺のペニスに感じきっていた。 とてもえろかった。 もっともっと、彼と数えきれないくらいセックスしたいと思った。 十一月には一足早いクリスマスの真似事なんてものをやった。 とても楽しかった。 同時に、小綺麗に片づけられたマンションの部屋で、これまで、これから先ずっと、彼と一緒に暮らす相手が羨ましくて、羨ましくて。 「奥まで、もっと」 せめて体だけでも深く繋がっていたいと思った。 彼の日常を壊すつもりなんてなかった。 不幸せになんかしたくなかった。 自分の一つにしてしまいたいと、ちょっと危ない想いに駆られたこともあったけれど。 「本当は、君は、ああいう女の子と一緒にいるべきなのに」 そんなことを言う真面目な彼に何度も恋をした。 「今日……帰らないと……」 だから許された時間に終わりが来る度、泣きそうになったし、実際、泣いてしまった。 俺の涙に中てられた彼はシャットダウンを選んで去っていこうとした。 でも、彼は、戻ってきてくれた。 「君のことが好きだ」 俺も好き。 大好きです。 肌身離さず、貴方のこと、抱いていたい。 ねぇ、久也さん?

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