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「松本、週末合コンどう?」 「なんっと高校生!」 「俺はパス」 「んだよ、ケチ」 「俺、好きな人いるから」 「あ、やっと教えてくれたな」 「その返事を待っていた!」 「……え?」 「いつ俺らに言ってくれるのか待ってたぞ、松本」 学食にて、ナポリタンを食べていた松本は思いがけない友人の言葉に珍しく照れくさそうに笑った。 その夜、バイトが終わった松本は自宅アパートとは違う方向へ真っ先に向かった。 初めて足を下ろした町の駅、ホームを抜けると、やはり少々覚束ない足取りで外灯の下を進む。 午後八時過ぎ、緑が適度に生い茂る、人通りの疎らな裏道。 秋と冬の中間地点、吹く風は冷たく、ぐるぐる巻いたストールに首をすぼめて歩調を速める。 手にしたスマホに表示された地図に集中する余り何度か電柱にぶつかりかけた。 途中、コンビニに寄ると缶ビールを二つ買い、野良猫が階段で寝ていた小さな神社、明かりの消えた保育園の前を通り過ぎて。 角に建つ五階建てのマンションに入った。 オートロックではなく、吹き抜けの階段を三階まで上って、照明に照らされた通路を前進する。 腰壁の方へ体を傾ければ、通りがかった神社の境内に鬱蒼と茂る楠、立ち寄ったコンビニが視界に入った。 松本はある部屋の前で立ち止まった。 部屋番号を数秒ほど凝視し、チャイムを押す。 間もなくしてドアの向こうから駆けてくる足音が聞こえてきた。 ロックを外す歯切れのいい音色が響く。 次の瞬間、ドアが大きく開かれた。 「こんばんは、久也さん」 部屋の主である久也は微笑んで松本を出迎えた。

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