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オマケ小ネターいろいろー

【もうすぐ春ですね】 「ぶえっくし!」 「君にとってつらい季節がやってきたな」 「はい゛、そうですね゛」 「台詞のありえないところに濁点がついているぞ」 「鼻が詰まっでいるんです」 「そんな様子ならお花見は無理だな」 「え゛?」 「お弁当でも買って、混雑する有名どころは避けて、近場にある公園でもいいかと思っていたんだが」 「いぎまず」 「……なんて言ったんだい?」 ふがふが口調でただでさえ聞き取りづらく、その上マスクもしている大学生に真面目リーマンはわざと首を傾げてみせる。 「いーぎーまーず」 「ふふ」 春先は花粉症+風邪気味となってやたら弱ってしまう大学生に思わず笑みを零してしまう真面目リーマン。 まぁ、その分、過保護になって甘やかして、なんでも許してしまったり。 「プリンだべだいです」 「そこのコンビニのでいいかい?」 「駅前のコンビニのがいいです」 「わかった、じゃあ今から買ってくるよ」 「あ、やっぱりだめ、行がないで、一緒にいでください」 「わかった」 「久也さんおでせいの卵粥で充分です」 「わかった、わかった」 「あと一時間ぽんぽんしでください」 「地味にきついな。だがまぁ、うん、仕方ない」 真面目リーマンは多忙ながらも自己管理に長けているので滅多に体調を崩さないという。 【久也がどこかでちび松本千紘に出会った~】 「遊んでーーーー!!」 小さい頃の千紘君は案外ちゃんと子供っぽい性格をしているのだな。 もっとドライな幼少期を過ごしていたのかと思っていた。 「飛ぶよーーーー!!」 ちょっと待ってくれ、千紘君、ジャングルジム天辺からジャンプは危ない、せめてもう少し下に降りてくれないか。 「やだ! こっから飛ぶ!!」 どすっ!! 「うっ」 ……日頃あんまり運動をせずに体力をつけていないものだから、なんとかぎりぎり千紘君を抱き留めることができたものの、あばらが折れたような痛みが……。 「げほげほっ」 「だいじょうぶ!?」 「う、ん、多分、大丈夫だ」 「次あっちー!」 重い、小さい体ながらもこんなに重いものなのか、油断したら滑り落としてしまいそうだ。 「早くー!!」 「はぁはぁ……げほ……こ、これでも全力疾走しているんだが」 *** 自己管理には長けているけれど、体力作りは怠っている久也さんなのだった。 【春の宵に思わず独り言】 仕事が珍しく定時に終わった。 まっすぐ帰宅した久也は先に風呂を済ませて半袖シャツとスウェットに着替えると、冷蔵庫から冷えていた缶ビールを取り出し、ベランダへ。 昼間の陽気がうっすら残る生温い夕暮れ刻。 遠くで合図でも奏でているかのように瞬く街並み。 茜色と藍色がせめぎ合う遥か上空を飛行機がゆっくり飛んでいく。 「……」 何故だかふと脳裏に、今、ここにはいない彼の顔が浮かんだ。 肩にタオルを引っかけたまま、宵風に濡れた髪を愛撫されながら、久也は手摺りにもたれてビールを一口飲む。 彼は今、何をしているのかな。 大学に残って勉強中だろうか。 部屋で寛いでいるのだろうか。 「会いたいな、千紘君……」 「アポ無しで突然来ちゃったりなんかしてみました、久也さん」 「……君は色んな意味ですごいな」 「え? どーいう意味ですか?」 コンビニの袋をガサゴソ言わせて部屋に上がってきた松本に肩越しに微笑して。 「知らなくていいよ」と、久也はそっと呟いた。

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