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オマケ小ネター松本ワンコ化いろいろー

【ワンコになった】 早朝、目が覚めたら犬になっていた松本は絶句した。 なんだこれ、これなんだ。 どうしよう、課題の締め切りが迫ってるっていうのに、こんな肉球つきの手じゃあキーボード押せない……。 「ん……」 松本ワンコははっとした。 週末、恋人宅にお泊まりした彼の隣では当の恋人である久也がスヤスヤと眠っていた。 安眠を妨げるのも心が痛む、しかし緊急事態に直面している松本ワンコは止む無く久也を起こしにかかった。 眠れる久也の頬をべろべろ舐めまくった。 「ん……?」 ーー久也さん、起きてください! ーー俺、犬になっちゃいました! 「……ちょっ……? 朝っぱらから何をやっているんだ、千紘君っ……、……、……」 松本ワンコに頬をべろんべろん舐められて否応なしに目覚めを誘われた久也。 同じベッドで同じ寝具に包まっているワンコにぎょっとした。 「どこから入ってきたんだ、君は」 ーー久也さん、俺ですよぉ。 「ふ……随分と人懐っこい子だな」 犬の飼育経験がある久也はいきなりベッドに出現したワンコに驚きつつも、決して嫌そうにせず、頭をヨシヨシと撫でた。 「千紘君はもう起きたのか。私より起きるのが大抵遅い上、無駄にベッドでダラダラ過ごしているのに」 ーーそんな言い方ないですよぉ、久也さぁん。 【松本ワンコと遊ぶ】 ベッドから腰を上げ、寝室を出た久也は部屋に姿が見当たらない年下の恋人に首を傾げつつ、一先ず朝の身支度を整えた。 ずっと隣をついてきた松本ワンコを見下ろして困ったように笑いかける。 「まさか千紘君からの贈り物かな」 七分袖の白シャツにグレーのルームパンツを履いた久也はしゃがみこみ、ずっと心細そうにクンクン鳴いていた松本ワンコを優しく撫でた。 「だけど君は立派な成犬で毛並みも綺麗に整っているし。誰かに飼われているんじゃないのかな。ひょっとして私を驚かせるために千紘君が連れてきたんだろうか。そうだとすると君からしたら迷惑千万な話だな」 ーーあー、きもちいい、そこもっといっぱい撫でてください。 目覚めたときはワンコ化のショックで混乱していた松本ワンコだったが、久也に撫でられている内に、何だか何もかもがどーでもいーような気がしてきて、ここぞとばかりに年上の恋人に甘えた。 「はい、お手」 「わんっ」 「おかわり」 「わんっ」 「ふふ。本当にお利口さんだな。千紘君にも見習ってほしいものだ」 ーーそれってどーいう意味ですかね? 「荷物も置きっぱなしにして、やれやれ、どこをほっつき歩いているんだか」 ーー完全、だめなコ扱いじゃないですか。 「君だっていきなり知らない人間に添い寝させられて怖かっただろう? 突拍子もない真似なんかして。こどもじゃあるまいし。何を考えているんだろう。さっぱりわからない」 ーーそこまで言いますか。 「それなのに好きだなんておかしな話だな」 松本ワンコはつぶらな瞳をまんまるさせた。 眼鏡をかけた久也は柔らかな微笑を浮かべて松本ワンコをいとおしげに撫で続けている。 昨夜、年下の恋人にしつこくおねだりされた夜更かしが祟って眠気を引き摺る久也は欠伸をした。 「まだ七時過ぎか」と、呟いた久也はソファに横になった。 つぶらな瞳で真っ直ぐ見上げてきた松本ワンコに両腕を広げてみせる。 「おいで?」 松本ワンコは嬉々としてソファに飛び乗った。 尻尾をブンブンさせ、眠たげな久也の懐で器用に丸まり、大好きな匂いを満喫した。 ウトウトしている久也はあたたかな温もりに顔を寄せ、そっとキスひとつして、呟いた。 「早く戻ってこないかな、千紘君……」 【ワンコから戻った】 「千紘君、いつまで寝ているんだ」 次にソファの上で目覚めたとき、松本はワンコから元の姿に戻っていた。 「あ」 よかった、元に戻ってる。 いや、実は、ひょっとして。 全部夢だったとか? 「千紘君、どうしたんだい」 ソファの上でぼんやりしていたら久也が顔を覗き込んできた。 「えーと」 口ごもる松本に久也はゆっくりと微笑を浮かべる。 おもむろに片手を差し出してきたかと思うと彼は言った。 「お手」 反射的に松本はグーにした手を白い掌に預けて鳴く。 「わんっ……えっ、あれっ……え……?」 「お昼はドッグフードにした方がいいのかな」 「え、え、え? それって……どーいう意味……」 ワンコ化した自分の相手をしていた久也の様子を思い出し、松本は、特につぶらではない目を見張らせた。 『それなのに好きだなんておかしな話だな』 「あ、あの、久也さんも同じ夢を見て、じゃない、久也さんは……俺だって気づいていたんですか? 一体、いつから……?」 「何の話だろう」 「……そんな、知らないフリして、イジワルしないでください」 「おかわり」 「わんっ……ッ……それやめてくださいよぉ」 戻ってくれて嬉しいが、時々、つぶらな瞳で尻尾をブンブン振り回す君になってくれても構わないよ。

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