後片付けの洗い物は中途半端なところで投げ出されていた。 「久也さん……今、すごくいい眺めです……」 薄暗い寝室。 バスタオルで大雑把に拭いた裸身をダブルベッドに横たえる松本に久也は跨っていた。 シャツは着用したまま、下には何も身に着けていない年上の恋人の奥深くまでめり込んだ、依然として腕白なペニス。 むしろ熱い抱擁に出迎えられて一段と硬さを増していた。 狭まる内壁を拡げ、貴い熱を共有し、中毒性の高い昂ぶりに全身を乗っ取られていた。 「はぁ……」 銀縁眼鏡をかけ直した久也はため息を零す。 相変わらず軽口を叩く松本を薄目がちに見下ろすと、久し振りの同衾に後孔を従順に疼かせて、自身の腹をたどたどしくなぞった。 「君の……こんなところまで来てるな……」 松本はゴクリと生唾を呑んだ。 我が身に乗っかり、慎重に互いを繋ぎ合わせ、もう声を上擦らせている久也に見惚れながら問いかけた。 「久也さん、動いてくれないの……？」 甘えた声色による催促に陶然とひそめられた眉。 緩く立てられた松本の膝に両手を突かせ、弓なりに背中を反らし、やおら動き出した。 窮屈な仮膣内で粘膜壁とペニスが擦れ合う。 絶妙な締めつけに下半身を弄ばれた。 「はぁ……一ヶ月以上ぶり……気持ちいいです……」 「ン……」 「久也さんの、ピクピクしてる、かわいい……」 「っ……あんまりジロジロ見ないでくれ……」 時に虚空で淫らに痙攣する久也のペニスに釘づけになっていた松本は言われた通りにした。 我が身の真上で扇情的に腰をくねらせる彼の上半身へ手を伸ばす。 シャツ越しに掌をあてがい、平らな胸を揉みしだいた。 「ン、ン……」 上擦る吐息を鼻孔から逃がして久也は色香を孕む眉間の皺を増やす。 じっくり揉みしだかれた後、薄手のシャツを巻き込んで突起を抓られると、白い喉を反らした。 指と指で挟み込まれて細やかな刺激を送り込まれると内腿がブルブルと震え出した。 「あ……ン……」 シャツの下に潜り込ませた両手で直に愛撫すれば緩みがちな唇から嬌声を滴らせた。 「乳首、もうこんなにコリコリ……かわいい」 「あ……ぅ……あ、あ、あ……っ」 「ペニスも、さっきより跳ね上がってますよ……？　そんなに乳首感じちゃいますか……？」 「ッ、や……っ……それ、やめ……っ」 松本はコリコリと評した薄ピンク色の乳首を指腹同士で小刻みにしごき、律動を忘れた久也はシャツの内側に潜り込んだ両腕を咄嗟に掴み、仰け反った。 「あーーー……っっ」 軽く達したようだ。 もどかしげに跳ねたペニスの先端から透明なカウパーを溢れさせ、仮膣をぎゅっと窄ませる。 搾り込まれるような危うい肉圧がかかって松本は口元を弛緩させた。 「あ……すごい、今の……」 「ッ……ッ……はぁ……はぁ……ッ……はぁ……」 「久也さーん……動くの、もうおしまい……？」 「ッ……急かさないでくれ……」 二人は両手を取り合った。 五指もしっかり絡め、恋人繋ぎにして、共有する興奮をここぞとばかりに高め合った。 「あっ、っ、ン……奥、当たって……」 イイところにピストンの摩擦が及べば握力が増し、力任せに握り返されて、松本は腹底を無性に滾らせた。 自分に跨って、手を繋いで、ひたすら悩ましげに腰を振る久也の嬌態に心臓が燃え上がりそうになった。 「ど、しよ……また、でそう……」 ずれかけた眼鏡のレンズ下で久也は何度も瞬きした。 「いいよ、ナカに……」 お許しの言葉が出れば。 恋人繋ぎを解いた松本は久也の腰を強く掴み、下半身が浮くくらい何度も何度も激しく突き上げた。 息苦しそうに天井を仰いだ久也に再び白濁の熱流を叩きつけた。 「ん……っっっ、っ……っ……ま、またいっぱい……でて……」 二度目とは思えない勢いある射精に背筋を打ち震わせ、仮膣奥まで注ぎ込まれる感覚にクラクラした久也はその場に崩れ落ちた。 待ち構えていたかのように下から唇を塞がれた。 生温く潤う口内に松本の舌尖が訪れ、溜まっていた唾液を露骨に掻き回された。 絶頂の余韻で喘ぐのと同時に大好きな唇を食べ散らかし、松本は、互いの狭間で硬く屹立するペニスを握り締めた。 「久也さんも、いって？」 握られた瞬間、刺激に忠実に腰をビクつかせて涙ぐんだ彼にも絶頂を強請る。 シャツを捲り上げ、平らな胸の上でツンと芽吹いていた乳首にも口づけた。 突起が倒れ込むほどに舐め上げ、交互にむしゃぶりついては甘噛みした。 松本の真上で久也はあからさまに腰のみならず全身まで過敏にビクつかせた。 仮膣に図太く居座る熱源に、ペニスを扱き立てる掌に、胸の突端から離れようとしない唇に。 二人で初めて過ごす誕生日に浮かれっぱなしでいる彼の眼差しに身も心も鷲掴みにされて。 「ちひろくん……」 年下の恋人の名を呼びながら果てた。