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待ちに待った、日曜の夜だ。日曜は一日バイトが入っていて、夜になるころにはへとへとになっている。でも、智駿さんに会えるという最大のご褒美を思えば、辛くはなかった。俺はバイトが終わるとすぐにブランシュネージュに向かう。
智駿さんが店を出ることのできる時間を教えてもらっていたから、ほぼぴったりにその時間に店に到着した。そうすれば、店からでてきた智駿さんがこっち、と駐車場に連れて行ってくれる。
「久しぶり、梓乃くん」
「……お久しぶりです、智駿さん」
一週間ぶり。それでもすごく会っていないように感じた。久しぶりにみた智駿さんはやっぱりかっこよくて、きらきらして見える。ぱち、と目が合うとドキッとしてしまって、俺はすぐに目を逸らしてしまった。
どきりとしたのは、照れからだけではない。毎晩のように智駿さんを想ってアナルオナニーをしていたという、後ろめたさ。智駿さんに嫌われたくない一心でやったことだけれど、こうして本人を目の前にするとものすごく申し訳なく感じる。本末転倒というか、なんというか。
「梓乃くん」
車に乗って、助手席に座った所で声をかけられる。挙動不審だっただろうか、と慌てて顔をあげれば、ぱ、と視界が暗くなった。
「……んっ」
キスを、された。軽く、触れるだけのキス。
車の中で、周りは真っ暗で。そんな環境の中でするキスはなんだか大人っぽい。
「……ッ、智駿、さ……」
唇が離れて行く時、智駿さんは、ふ、と微笑んでいた。大人だ。かっこいい。年上の男の人って、こんなにかっこいい。
すさまじい勢いで高鳴る鼓動、火照る頬。おかしくなってしまいそうなくらいに、俺は智駿さんのキスにきゅんきゅんとしていた。
(……もっと、おかしくなることして欲しい。)
車窓の外で光る街頭が仄かに俺達を照らして、これからの時間への期待を煽っていく。
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