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 とくん、と胸が跳ねる。また、この目だ。瞳の奥でゆらゆらと炎を揺らして、それなのに冷たい硝子でその熱を隠している。どくん、と鼓動が高鳴って、がらがらと理性が壊れてゆく音を、聞いた。 「……襲わないんですか?」 「え……?」 「智駿さんは、俺のこと襲ってくれないんですか?」  は、と智駿さんが目を見開いた。何か俺は変なことを言ったのかな、と疑問に思ったけれど、この酒に酔った頭では、なにもわからない。 「……僕が、抑えているのわかっていて言っているのかな」 「……? っ、ん」  どこか焦ったような表情の智駿さんの表情が視界に入った瞬間に、噛み付くようなキスをされた。ああ、くる、となんとなくわかっていた。智駿さんの表情はそれくらいに切羽詰まっていた。 「んっ……んー……」  深いキスだった。触れたところから溶けてしまうくらいにそのキスは熱くて、くらくらとしてくる。でも、言葉で言い表せられないくらいに気持ちいい。じーん、と内側から染み出してくるように体中がぽかぽかとしてくる。頭のなかなんて、酒での酔いとは比べものにならないくらいなふわふわとして幸せいっぱいだ。 「あ……ん、ぅ」  舌をいれられて、ずく、と下腹部が熱くなった。ディープキスは、俺の中でものすごくえっちなイメージがあったんだと思う。愛情確認なら触れるだけのキスでも十分なわけで、それ以上に激しいキスをするということは、相手を激しく求めているということ。今、俺が智駿さんにディープキスをされているということは……彼に、激しく求められているんだな、そう思ってドキドキしてしまった。そして、興奮した。  ……智駿さん、もっと。 「んっ!」  くちゅ、くちゅ、といやらしい音に脳内が侵食されていた。だから、直前まで気づかなかった。智駿の手が、俺の服の中に入ってきていたことに。する、と智駿さんの手が俺のシャツに入り込んで、肌を撫ぜる。そして、胸元をくるくると撫でられた。 「んっ……んん……」  きゅ、と乳首を摘まれた。むに、とした感触をわずかに感じてそれに気付く。ああ、えっちなことをされている。そう思うとやっぱり興奮した。  でも、乳首をいじられたこと自体に感じているのかというと、違うと思う。くにくにとそこをいじられるとなんとも言えないいやらしさで頭の中は興奮するけれど、刺激を感じているわけではない。  ……もっと、乳首で感じまくれるようになりたい。AV女優みたいに乳首で感じて身体をかくかく揺らして甘い声をあげて、智駿さんにおかしくされたい。女の子の身体みたいにしてほしい。 「んっ……ふ、」  喘ぎ声とかだしてみれば、気分が盛り上がって感じたりするかな。智駿さんに乳首を触られて感じているわけではないけれど、俺はなんとなく喘ぎ声のようなものをだしてみる。唇は塞がれているから、そんなに声は出ない。でも恥じらいを捨てきれずにいながらも、AV女優の真似をほんの少ししながら、出してみる。 「んんっ……!」  上擦ったような、鼻にかかったような声が出た。うわ、これ、自分から出た声なんだとびっくりする。男がこんな声だしてキモくないかな……と、ひやっとしたけれど智駿さんはキスをやめない。ひかれるどころか手の動きはいやらしくなっていく。俺の胸元を弄る手が、激しくなっていく。 「ひっ……⁉」  ふいに、びり、と電流のようなものがはしった。智駿さんにいじられている乳首がずくんと妙な感覚に襲われる。そして、その感覚と共に身体の奥の方が熱くなって、腰が跳ねてしまった。  ……え。なに、これ。 「んっ……はぁっ……」  智駿さんが急に調子の変わった俺を不審に思ったのか、唇を離す。そして俺の顔をまじまじと見つめながら、また乳首をひっぱった。 「あっ……! んぁッ……」 ――な、なんだこの声!  自分の口からでたあられもない声にびっくりして、俺は慌てて自らの口を手で塞いだ。だって今の声。本当に女の子が喘いでいるみたいな声。もちろん演技なんてしていない。 「んっ……あっ、ぁ、ん……」  必死に、ぶるぶると震える手で口をおさえた。でも、初めてのこの感覚に耐えられなくて、声が次々とこぼれていってしまう。乳首に刺激を与えられるたびに身体の奥のほうがきゅうんっ、として、おかしくなりそうになるのだ。  これ、もしかして感じてる?  乳首で感じるってこういう感じなの?  智駿さんと電話しながらオナニーしたときのような気持ち良さ。チンコでイクのとは違う気持ち良さ。お尻の穴がひくひく勝手に疼いて、内臓がきゅんきゅんと痙攣している感じ。 「んっ……んんっ……だめっ、ちはやさんっ……」  ヤバい、気持ちいい。気持ちいい、乳首いじられるの気持ちいい。  待って、待って待って。このままいじられ続けていたらイっちゃうかもしれない。乳首をいじられただけで。冷静に考えてそれってどうなの。男なのに乳首でイったらひかれたり、しない? 「あーっ……あーっ……だめっ、だめっ……」  智駿さんはただ俺を見つめて、俺の乳首を刺激し続けた。イっちゃうから、って必死に首を振ってやめてと伝えているのに、智駿さんにやめる様子はない。  もう、だめ……。  快楽のあまり視界が潤んできて、それを見られるのを隠すように下を向く。そうすれば、いじられ真っ最中の俺の乳首が視界にはいってくる。……びっくりした。いつもよりもぷっくりつやつやとしていて、ピンク色になっていて。みるからにエロい乳首になっていた。  こんな……こんな、いやらしい俺の身体。智駿さんとの初エッチに備えて開発とかしていたけれど、やっぱり男がこんないやらしい身体をしていたら気持ち悪いに決まっている。女の子みたいに乳首ふくらませてよがっているなんて……変態だ、俺、ただの変態……。 「だめっ……! ちはやさん、だめっ……イクっ……だめ……」  もうだめだ。このまま乳首でイったら智駿さんにひかれるかもって思うのに気持ち良すぎて、もうだめ。  イク。  イク、イク…… 「あっ……」  視界が白く染まっていって、ああ、本当にイっちゃう、そう思ったとき、俺の身体は解放された。快楽で火照った身体は一人でちゃんと姿勢を保っていられなくて、ぱたんと智駿さんに倒れこんでしまう。 「……可愛いね、梓乃くん」 「ちはや……さん……」  いじられていた乳首が空気に触れて、敏感になっている。あともう少しで、乳首だけでイケそうになっていた。寸止めをされて残念という気持ちは正直あるけれど、あのままイったら智駿さんにどんな目で見られるかわからない。 「梓乃くんの身体、感じやすいね」 「っ……ち、ちがっ……違います……俺っ、男の人に触られるの初めてだから、」 「疑ってなんてないよ。こんなに感じやすい梓乃くんが恋人で嬉しいなぁって」 「え?」  智駿さんが俺の背をいやらしく撫でる。ぞくぞくっとしてしまって、俺は思わずのけぞって変な声をあげてしまう。 「梓乃くんは男の子だし、年下だし、ちょっとセーブしようと思ってたんだけど……これは難しいかも。いつ、僕の理性がきれるか、わからない」 「り、せい……」 「……僕、好きな人が感じている顔見るのが好きなんだ。本当は梓乃くんのこと責め倒したいんだけど……さすがに、今はね」  ……それは、どういうことだろう。もしかして、智駿さんってサディスト? 隠してるだけで実はサディストなの? 「ちはやさん……」  ……いじめて。いじめてください。  かあっと身体が熱くなって、理性の奥に突っ込んだ願望がひょっこりと顔をだして。でもこんな願望は口にできなかったから、俺は智駿さんの胸に顔を寄せて、いつかしてくださいと頭の中で懇願した。

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