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今日、俺は夕方からバイトがあった。だから、日が落ちてきて少し涼しくなるころ、お別れの時間がやってきた。
車で駅まで送ってもらう。人通りのないところに車を止めて、そこで俺はシートベルトを外した。
「梓乃くん」
名前を、呼ばれる。どきん、として智駿さんの方をみると、するりと頬を撫でられて唇を奪われた。
「……」
すぐに、唇は離れてゆく。さっきまであんなにエッチなことをしていたのに、外ではものすごくプラトニック。爽やかで優しい智駿さんの微笑みをみると、さっきまでのことが夢のように感じた。
「また、来週ね」
「はい……」
来週。来週も、今日みたいな……いや、今日よりもエッチなことをしてくれるかな。今日からまた一週間智駿さんと触れ合えないと思うとこの別れが憎たらしく感じるし、時が止まればいいって、そう思ってしまう。たった一週間が長く長く、遠いものに感じてしまう。
「智駿さん……」
「ん、」
「……好き、です」
「うん。僕も」
もう一度、今度は俺からキスをした。車の中の音が消え去ったような錯覚を覚えた。俺たちの世界からもう抜け出さなくちゃいけないってことが、とても、さみしかった。時間のぎりぎりまで、熱を、唇に刻みあった。
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