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Nougats de Montelimar~メレンゲにナッツを混ぜて~

 初めて、ひとつになったあの日から。俺は週一とはいわずによく智駿さんの家に行くようになっていた。智駿さんが疲れているからエッチは相変わらず週一くらいしかしないけれど、短い時間でも智駿さんといちゃいちゃできるのが嬉しかったし、俺がごはんを作ってあげると智駿さんが喜んでくれて幸せだった。そんなふうに、以前よりも料理をする頻度があがったから、その腕はあがったと思う。 「梓乃~」 「んー?」 「梓乃の料理美味いね~嫁にきて」 「ねーよ」  そんなわけで、彰人にごはんを作ってあげてみれば、美味しいと言ってくれた。今日は彰人の家にある漫画を読破するために、学校帰りに家にお邪魔させてもらっていた。漫画を読ませてもらう料金としてごはんを作ってやる、っていうのは結構前からやっていること。彰人は一人暮らしをしているけれど、料理をするのが面倒で、手料理に飢えているらしい。 「っていうかそういうこと彼女に言えよ」 「別れた」 「は!? 聞いてないんだけど!?」 「あ~、ごめんごめん、大したことじゃないかなってそのうち言おうと思ってたら言うの忘れてた」 「大したことじゃないって……」  彰人は平らげた皿に向かって手を合わせて「ごちそうさま」を言うと、ごろんと横になった。彼女と別れたことを「大したことじゃない」と言い切った奴にびっくりして俺があんぐりとしていれば、彰人はちらりと俺を見上げて笑う。 「梓乃とかとだらだらしてたほうが楽しいじゃん」 「……そう言ってくれるのは嬉しいけど」 「女の子に飽きちゃった」 「……クズだなおまえ」  彰人という男は、典型的な最近の大学生だ。登校してくるなり「ウェーイ!」と言っては飲み会のたびに「ウェーイ!!」と言っている。なかなかのクズだけれど、この適当さが一緒にいて心地よいしなんだかんだで一番仲がいいと思う。  彰人の頬は、お酒をご飯と一緒に飲んでいたからかほんのりと赤い。表情もどこかだらしなくて(いつもだけれど)こいつ大丈夫か、なんて思う。横になったまま腕を伸ばしてきて、俺の手をつかむ。さわさわとしばらく俺の手をいじって、にこにこと笑っていた。 「っていうかさー、梓乃がいい」 「ふーん」 「女の子とよりさー、梓乃とちゅーしたい」 「勘弁してくれ」 「いやいやマジだって」  彰人は相当酔っているようだ。のっそりと起き上がると、がばっと俺にしなだれかかってくる。いつもスキンシップが多いところはあるけれど、これはさすがに……なんて思っているうちに俺は彰人に押し倒されていた。 「彰人ー……どいてー……」 「最近の梓乃ってなんかさー、可愛いっていうか」 「気持ち悪い」 「俺、男もいけるかなって思ったり」 「いけなくていい」  男に押し倒されて俺はどんな顔をしたらいいんだ……、なんてものすごく複雑な気持ちになって俺は彰人を押しのける。でも奴はなかなかどいてくれなくて、むしろぐっと顔を近づけてきた。そして、 「げっ、ふざけんな」  俺の服の中に手を突っ込んできた。  悪ふざけがすぎる、って不愉快になったけれど彰人の力が予想以上に強くてどかすこともできない。彰人はそんな俺の戸惑いなんて無視して、へらへらと笑いながら「肌すべすべ~」なんてほざいている。手は徐々に上の方まであがってきて、服がめくれあがってきて、俺が半分キレながら抵抗したけれど酔っぱらいってやたらと強い。 「んっ……!」  結局首元まで服をたくしあげられて、ぎゅっと乳首をつまみ上げられた。 「……声、上ずったね?」 「ち、ちが……今のは、急に触られたからびっくりして、」 「んー? ほんと?」 「あっ……! あうっ……」  彰人はじっと俺を見下ろしながら、ぎゅーっと俺の乳首を引っ張りあげた。前は智駿さんにいじってもらわないと、オナニーでもなかなか感じなかった乳首。智駿さんにいじられまくって開発されてしまっていて、やたらと敏感になっていた。だから彰人とかいうクズに触られても感じてしまって、俺は慌ててその手を払いのけようとする。 「乳首、感じるの?」 「っ、いい加減に、しろって……! ひっ……」 「めっちゃ敏感じゃない?」 「ひ、ひっぱるな、っ……あっ……!」  ぴくっ、ぴくっ、と腰が震えてしまう。ほんとうに、無理。気分は萎えに萎えまくっているのに、敏感なそこをぐりぐりとされたら身体が反応してしまう。抵抗することよりも声を出さないことに必死になって、彰人に身体の上に乗り上げられても俺は何もできなかった。彰人は俺の腰の辺りに座って、にこにことしながら俺の乳首を責め続ける。 「……っ、……、」 「身体ビクビクしすぎ、もしかして乳首でイケたりできる?」 「……ッ、」 「できるでしょ、ほら」 「あっ……!」  一際強くコリコリとされながら引っ張られて、俺の身体は勝手にのけぞった。ヤバイ、そう思って俺はぎゅっと自分の口を手で塞いで目をとじる。案の定、イクときの感覚がざーっと襲ってきて、 「~~ッ、……、……!」  俺は達してしまった。  ものすごい喪失感に襲われてぐったりとしてしまう。智駿さん以外の男にイかされるとか、ショックでしかない。身体が敏感になったのは智駿さんとエッチする分にはいいけれど、こんなふうに違う人に触られても感じてしまうなんて、そんなことは求めていない。 「……おまえ、ほんと、やめろって、」 「あー……満足。梓乃、おまえめっちゃ可愛いのなー」 「ふざけんな、って……」  彰人はどさりと俺にのしかかってきて、ぎゅっと抱きしめてきた。イッたばかりで気怠くて、俺が抵抗しないでぼーっとしていれば、彰人は俺の耳たぶをはむはむと唇でいじりだした。全くもって嬉しくないし彰人にやられても気持ち悪いだけなのでさすがにそれは拒絶する。腕は動かせなかったから、顔を背けてそれから逃げれば、彰人は「かわいい」ってぼやきながら笑っていた。 「……?」  彰人の「かわいい」にゾワゾワしながらも我慢していれば、すーすーと寝息のようなものが聞こえてくる。恐る恐る顔を伺えば、案の定、彰人は眠っていた。 「まじ、ない」  俺に不快な思いをさせながら一人で気持ち良さそうに寝ている彰人にイラッとしながら、俺は彰人の体を持ち上げてベッドに放り投げてやる。俺がなんとなく冷静でいられるのは、彰人に襲われても、奴は適当な奴だから何かの拍子に欲情してそばにいた俺を襲っただけ、って解釈できたから。これが真面目な人とかならびっくりするし、ガチなのかなって次からどうやって顔を合わせようとか考えるけれど、彰人の場合はなんだかそういうものがない。彰人は下半身がだらしないし、男も時には襲ってみたくなるのかも。彰人に「実は男とも二、三人くらいとヤったことある」って言われても、意外だとは思わない。ただ、それで俺を襲ってくるのは、本当に勘弁だけど。  俺はため息をついて、皿を片付ける。軽くそれを洗うと、いつも借りている布団を引っ張り出して横になった。  今後、さっきみたいに男に襲われることとかない(と思う)けれど、次は何が何でも抵抗しようと思った。この身体は智駿さんのものであって、誰彼構わず触られていいものじゃない。  ぐーすかぐーすかと寝ている彰人に、次やったら殴るからな、って言って、俺は目を閉じる。

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